【寂聴さん遺品寄贈】二戸市長「思い受け継ぐ」 偲ぶ会、市に目録
二戸市名誉市民で、天台寺名誉住職の故瀬戸内寂聴さんの蔵書約1万冊を含む遺品が8日、市へ寄贈された。旧浄法寺町長で、寂聴さんを寺に招いた山本均さん(75)=同町出身、仙台市在住=が会長を務める「瀬戸内寂聴師を偲(しの)ぶ会」が、地域活性化につなげてほしいと贈った。 山本さんと、同会副会長で浄法寺地区在住の田口俊夫さん(75)が二戸市役所を訪問。藤原淳市長に寄贈品の目録と「源氏物語」など蔵書の一部を贈った。 山本さんは「郷里の浄法寺を離れて30年以上たつが、寂聴さんの魂がこもった遺品を活用し、地域が栄えてほしい」と強調。蔵書について「二戸の活性化に協力した人や、全国の寂聴さんファンも喜ぶような使い方ができれば」と願った。 町長時代からの親交を振り返り、「いつも私は本音で話し、寂聴さんも何かあれば頼ってくれた」としみじみ。この日は寺の霊園にある寂聴さんの墓を訪れ、9日の命日を前に寄贈を報告するとし、「あの世から『しっかりやれよ』と言われている気がする。私も高齢だが、遺志を継いで地域のために頑張る」と力を込めた。 藤原市長は「寂聴先生が地域に注いだ情熱は、並大抵のものではない。思いを受け継ぎ、まちづくりに生かす」と感謝。寂聴さんが京都から株分けした寺のアジサイを、1万株に増やそうと公民連携で進めている活動に触れ、「寄贈品は寺周辺の活性化にもつながるよう使いたい」とした。 寂聴さんが2021年に亡くなった後、信頼の厚かった山本さんは遺族から遺品の扱いを一任された。蔵書約1万冊と、漆器や陶器、書棚など100点余りを浄法寺地区の旧太田小体育館で保管している。残る一部の遺品は、寂聴さんの出身地・徳島県の県立文学書道館や、東北地方各地の大学、自治体などに贈った。
デーリー東北新聞社