「黄斑円孔」のサル、ES細胞から作った網膜シート移植で視力改善…神戸アイセンター病院など
目の網膜の中心部が欠けて視力が低下する病気「黄斑円孔」を発症したサルに、様々な細胞に変化できる人の胚性幹細胞(ES細胞)から作った網膜シートを移植すると視力が改善したと、神戸市立神戸アイセンター病院などの研究チームが発表した。iPS細胞(人工多能性幹細胞)でも可能といい、論文が国際科学誌に掲載された。
黄斑円孔は加齢などが原因で、視細胞が密集する黄斑部に穴ができる。50歳以上の0・1~0・3%程度で生じ、男性より女性に多いとされる。
同病院の万代道子・研究センター長らは、人のES細胞から網膜のもとになる組織を作り、直径約1ミリ、厚さ約0・1ミリのシート状に切り出した。この網膜シート1枚を、特殊な注射針を使って黄斑円孔のサルの眼球に入れ、穴があいた部分を埋めるように移植した。シートは円孔の周りの網膜とつながった。
半年後、画面に映し出された画像をこのサルに見せると、視線が正しく画像の方を向く回数が増え、視力の改善がうかがえた。チームは、ES細胞と性質が似ているiPS細胞でも治療は可能としている。万代センター長は「将来的に難治性の黄斑円孔の治療につながれば」と話す。
関西医科大の今井尚徳教授(眼科学)の話「サルの目に移植しても生着が良好だったことは、臨床応用に期待が持てる結果だ。安全性や、移植したシートが機能しているかどうかについては今後も検討が必要だろう」