“危険なプロレス技”問題の対処法 カギは「合同練習」と「ムードメーカー」…主催者の見解
「練習のムードメーカーになれ」
だからこそ、南月代表は「対応力を養うためにトレーニングをしてます」と話しつつ、次のように証言する。 「トレーニングは何が起こっても対応できるように、いろんな場面を想定して練習しています。やっぱり“合同練習”を大事にしているかもしれないですね。パーソナル(個人練習)だと自分に合った、自分のための練習じゃないですか。そういうのって、身体能力は上がるかもしれないけど、“合同練習”は体力を養うこともできる。しかもそれだけじゃないですよね」 続けて南月代表が持論を述べる。 「自分がよく言うのは、『練習のムードメーカーになれ』。その場の空気を作れる人間っていうのはリング上の景色も変えられる。それが引いては、入場してきただけで会場の空気を変えられるようになるんです。『なんか今日、空気が澱(よど)んでるなあ』って思っていても、ムードメーカーがいることでけがの防止につながりますよね。やっぱり空気が澱んでいる時って何か起こったりするんですよ。そこで『よし行くぞ!』ってムードメーカーがいるとやる気が出るとか、その空気を変えられる。あとは、どこにいたら邪魔なのか。この人は何が得意で何が不得意なのかを意識することだったり。自分が疲れていても、みんなで練習をしていたら『今行かなきゃいけない』って思わぬ力が出ることもありますよね」 ここまで書いて、実は興味深い話がある。現在のシードリングには、キャリアの浅い若手しか所属選手がいないということ。要はシードリングが大会を開く場合、出場する選手のほとんどがフリーとして活躍する、シードリング以外の選手になる。 「自分のリングに上がってきてくれる人たちは、しっかりと土台を作ってきてくれるからこそ、激しい闘いもできますし、そこは全部“信頼関係”ですよね。闘う選手も、呼ぶ側も。常々、私は『レスリングで会話のできる選手になれ』って言われてきたけど、それは『組んだだけで相手の意図や動き方が分かって、すぐに対応できるように』ってことだから、それを頭に入れながら指導をしています。あとは、ひと口に『選手』って言っても、男子プロレス出身の人、背のデカい人、小さい人……、全部対応できるようなプロレス力を持っている人たちだからこそ、毎大会、刺激的なカードを組ませていただけると思っています」(南月代表) 少人数で団体を運営していくメリットは他にもある。 「ウチはまだ人数が少ないですけど、特に団体の指針が共有できるようになりますよね。『シードリングの目指すのは“魂の女子プロレス”だ』ってことを打ち出せるじゃないですか。しかも、実際に所属はしていなくても、ウチに上がってくれるフリーの選手たちは、そういう思いを持ってシードに上がってくれているなっていうのは感じるんですよ」(南月代表)