金原ひとみさん『ナチュラルボーンチキン』刊行、40代女性の出会いと再生
本作は、温かな希望に包まれながら幕を閉じる。「前向きな小説を書くのが私にとっての新しい挑戦だった」と振り返る。
2004年に『蛇にピアス』で芥川賞を受賞して、今年でちょうど20年がたつ。「デビューしたてだったので、波にのまれるがままに取材を受けていた。お祭りみたいな日々だった」
子育ての孤独と重圧を描いた『マザーズ』、結婚生活に悩む男女の物語『アタラクシア』など、現代人の心と性、その奥底に潜む感情に真っ正面から向き合う作品を次々に発表し、着実にキャリアを積み重ねてきた。「時代も変わっていくし、人も変わっていく。時代と人を掛け合わせることで、書くテーマはなくならないと思っている」
今後の執筆活動について、「新しいものや、未来に焦点を当てていきたい」と語る。「コロナでは人の普段見えない部分がむきだしになった。作家として、そういう変化や驚きは書き逃したくない」
ここ数年は新しい趣味として、山登りに精を出す。「最初に登った時は、へろへろになりながら、なんとか下山できました。自分の限界に挑戦して、突破している感じかな」。目をくりくりとさせながら笑った。