『アンパンマン』が夜の劇場で再熱 “大人向け”施策が生む新たな集客チャンスとは?
『プリキュア』『仮面ライダー』が再構築した作品としての“新しい価値”
『アンパンマン』に限らず、従来は子ども向けだった人気作品が、近年相次いで大人向けの施策を積極的に導入している例は多い。特に注目すべきは、2024年に放送開始から20周年という記念すべき節目を迎える『プリキュア』シリーズの取り組みだ。 この記念の年を前に、制作陣は幼少期から『プリキュア』と共に歩んできたファンに向けた特別な映像作品の制作に着手。その第一弾として誕生したのが、『Yes!プリキュア5』のヒロイン夢原のぞみを中心に据え、彼女たちの成長後の姿を描いた『キボウノチカラ~オトナプリキュア'23~』である。 本作は、おっちょこちょいながらも常に明るく前向きな性格で親しまれてきた夢原のぞみの新たな姿を描く。かつて彼女は普通の中学生だったが、妖精ココとの出会いをきっかけに、希望のプリキュア・キュアドリームとして覚醒。仲間と共に強大な敵に立ち向かった。 そして時は流れ……。大人へと成長したのぞみたち。平穏な日々に突如、人間を襲う謎の存在ーシャドウーが現れる。仕事、人間関係、恋愛など、大人になって初めて直面する悩みや壁に苦悩する姿は、まさに現代を生きる大人たちの姿そのものだ。 さらに2025年1月には、『魔法つかいプリキュア!!~MIRAI DAYS~』の放送も決定。2016年に放送された『魔法つかいプリキュア!』の正統続編として、多くのファンから期待を集めている。 一方、『仮面ライダー』では、大人の新規層獲得を狙った異例のケースもある。2022年に放送されたアニメ『風都探偵』は、2009年の特撮テレビドラマ『仮面ライダーW』の正統な続編アニメだ。特撮作品の続編がアニメ化されるのは極めて珍しく、長寿シリーズである『仮面ライダー』にとっても初のTVアニメ化という画期的な取り組みとなった。 元々『ビッグコミックスピリッツ』で連載されていたマンガ『風都探偵』は、アニメ化によって更なる進化を遂げた。実写では表現が困難な斬新な怪人デザインや、青年誌らしいエロティックでバイオレンスな描写など、2次元メディアならではの大胆な演出が随所に盛り込まれている。また、原作の持つミステリー要素やキャラクター間の複雑な人間関係も、アニメーションの特性を活かしてより深く描かれた。 この意欲的な試みにより、『風都探偵』は前作となるドラマ『W』を知らない大人のアニメファンからも絶賛される作品となり、幅広い層への訴求に成功したのだ。従来のファンを大切にしつつ新規層の開拓にも成功した『風都探偵』は、大人をターゲットにコンテンツの新たな可能性を示す注目すべき事例となっている。 大人向け施策の工夫の中心は、ただ懐かしさを感じさせるだけでなく、作品としての新しい価値を生み出すことにあるのかもしれない。キャラクターが成長した先で悩む姿を描いたり、作品内の“お決まり”を良い意味で裏切る描写を描くことで、幅広い年齢層が楽しめる作品に進化した作品も少なくない。 このような世代を超えて楽しめる作品が増えることで、家族みんなで話せる話題が増え、世代を超えた会話が増えることも期待できるのではないか。価値観が多様化する現代だからこそ、世代を超えて共感を呼ぶ作品の重要性はますます高まっていくのだろう。 参照 ※ https://mt.anpan-movie.com/2024/
すなくじら