「家族に誇れる会社で働きたい」…伊藤忠のイスラエルへの協力にNOを突きつけた! ある社員の思い
「その方は私以上にアクションを起こしている方で、社内のサステナビリティ関係の部署に問い合わせをしたり、本社前で行われた抗議デモに参加されたりしているんですよ。お互いの状況や思いを共有でき、一人でも仲間がいることがわかり心強かったです。 私自身はずっと匿名での投稿ですし、社内で『このビジネスは良くないよね』と影響を説明することを試みたりしたものの、本質について議論できるような仲間はリアルには見つけられませんでした。反論もされず、『早く平和になると良いよね』くらいの反応が主流でしたね。 でも、それなりの大手企業で働いている人たちは、会社の方針や社会における立ち位置をある程度認識していますし、自分がその一部であることもわかっているので、社会からネガティブなことを言われる会社というのはきまりが悪いと思うのです。家族に誇れる会社で働きたい。だからこそ、何かあったときに社員が声をあげられるといいなとは思います」 社内で話題になったり、犯人探しされたりするリスクはなかったのだろうか。 「私も最初はIPアドレスみたいなもので会社にバレるんじゃないかと思ったんですが、今のところ何もないです。 バレると、いろいろ聞かれたりするだろうとは思っていましたが、間違ったことや悪いことをしているわけではないので、そこには自信がありました。 それに、平社員なので、降格もないですし、左遷とかもないだろうし。そこは開き直りもありましたね」 ◆「正しい方向に軌道修正できる会社だということがわかり、ほっとしました」 かくして、伊藤忠がエルビットとの取引を中止するという悲願が達成されたわけだが。 「びっくりしました。でも、こういう判断をしてくれるだろうなと信じていた部分もあったので、諦めて黙っておくとか、諦めて転職するとか、そういう選択をしなくて良かったと思いました。 私も最初は良い方向に行かないのであれば、会社をやめていいやと思っていたんです。伊藤忠の発表を読むと、我々市民の抗議ではなく、もっと大きな力が影響しているということですが、外部からの影響であっても変われること、社会・世界を見て正しい方向に軌道修正できる会社だということがわかり、ほっとしました」 最後に、今回のアクションを通して変わったことを聞くと、よんさんはこう語った。 「私が今回、中から声をあげたから伊藤忠がそのような判断をしたとは全く思ってないですが、判断の理由の0.001%ぐらいは、もしかしたら私の声や私の署名も影響していたかもしれないと思うと、一市民が大きな会社を、社会を、世界を変えるというのは、小説などの中だけの話じゃなくて、現在進行形で作られていく歴史なんだなと感じました。 一市民が何か言っても無駄だと揶揄する声もありますが、それが無駄じゃないと感じられたのがすごく大きいです。中から声をあげたことだけじゃなく、署名をしたこと、SNSでいろんな人とつながったこと、涙を1粒描いたこと全部含めて、自分の中では大きな変化であり、世界の見え方が変わりました。 残念ながら4ヵ月以上経過した今も、イスラエルによる虐殺は続いています。伊藤忠グループが手を引いたから終わりではなく、1秒でも早くこの悪夢が終わるよう、引き続き自分ができるアクションを行っていくつもりです」 ガザでの虐殺を止めるため、あらゆる差別に反対するため、よんさんは今もXで様々な発信を続けている。 取材・文:田幸和歌子
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