米兵事件の見舞金支給、最高裁で遺族が敗訴 裁判長は異例の意見
沖縄県沖縄市で米兵2人が起こした強盗致傷事件をめぐり、裁判で米兵への賠償命令が確定したのに米側が払わないため、被害者側が日本政府に見舞金の肩代わりなどを求めた訴訟の上告審で、最高裁第二小法廷(三浦守裁判長)は16日、被害者側の上告を棄却する判決を出した。「見舞金を払っていない国の対応は違法ではない」とした一、二審判決が確定した。 【図解】米兵らによる事件・事故の被害補償は 裁判官4人全員一致の結論。ただ、検察官出身の三浦裁判長は国の対応について「被害者救済の理念に反する」などとする異例の意見をつけた。 米兵2人は2008年1月、タクシー運転手の宇良宗一(うらむねかず)さんを殴り重傷を負わせ、運賃を払わなかった。宇良さんの死後に遺族が提訴し、2人は計約2640万円の賠償責任を負ったが、米側が払った見舞金は約146万円だった。 日米両政府による「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)」の最終報告では、米兵らの公務外の事件事故で米側の見舞金が確定判決の賠償額に満たない場合、日本政府が差額の穴埋めに努めるとする。国はSACO見舞金として約1590万円を払う意向を示したが、支払いの遅れによる「遅延損害金」の約900万円を含めなかったため遺族側が国を提訴した。 最高裁判決は、遺族側が見舞金受け取りの承諾書を出していないため「国に支払い義務は生じていない」とした一審・那覇地裁、二審・福岡高裁那覇支部の判断を支持した。 ■「制度のあり方が問われる」国に注文 三浦裁判長は意見で、国の対応に賠償を命じるまでの違法性はないとする結論には賛同したものの、見舞金から遅延損害金を除外すると、被害者側の「正当な権利の実現を損なう」と言及。 米軍基地が集中し、米兵らの重大な犯罪行為が繰り返されている沖縄県民の負担軽減は「国政の重要な課題だ」と指摘した上で、「被害者らが十分に救済されるよう制度の基本的なあり方が問われる」と国に注文をつけた。(遠藤隆史)
朝日新聞社