日本農業の「限界」がいよいよやってくる…多くが70歳以上になる農家の「厳しすぎる現実」
「生産性向上」という道
いま問われているのは農業を続けられるかどうかではなく、子供の通学や年老いた親の通院など農業就業者を取り巻く日常生活自体が成り立ち得るかどうかである。「産業政策」から「地域政策」への転換が急がれる。 農業就業者の減少が避けられない以上、農業ビジネスモデルの転換は避けられない。経営規模が拡大するほど面積あたりの経費は低減することを考えれば、就業者の減少をカバーするには米国のように機械やAIを活用してスケールメリットを図ることだ。自動操舵システムやドローンによる農薬散布で作業時間を大幅短縮した事例も登場している。同時に、収益性の高い作物への転換を徹底することである。大規模化に向かない中山間地域の農地では、とりわけ収益性が重要となる。その上で、流通業や小売業を含むサプライチェーン全体としての生産性向上に取り組むことが必要だ。 農林業センサスを見ると、引退者の増加もあり法人を含む団体経営体は1000増えて3万8000(2.8%増)となった。団体経営体が増加するにつれて大規模化も進むため、1経営体あたりの耕地面積は3.1ヘクタールと、前回調査より20.4%増えた。耕地面積別に経営体の増減率を見ると、北海道では100ヘクタール以上が17.5%増えている。残る46都府県は50~100ヘクタールが34.5%増だ。 ただし、規模が拡大するにつれて収益性よりも補助金交付額の大きい作物を優先するようになるため、農業経費は一定規模に達すると低減しにくくなる。個人経営体の農地を統合する形で耕地面積の拡大を図るため、農地が分散してしまい非効率となることもマイナス要因だ。 こうした克服点も残っているが、成果は現れ始めている。財務省の資料によれば、1経営体あたりの農業所得は平均174万円だが、主業農家は662万円(2018年)で、この10年間で58%増となった。農産物価格の上昇もあるが、経営規模の拡大によるところが大きい。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)