大坂なおみ ママで国内初勝利 観客子ども泣き出し中断も動じず笑顔「娘のシャイを思い出していた」
◆テニス女子国別対抗戦ビリー・ジーン・キング杯予選 日本-カザフスタン第1日(12日、東京・有明コロシアム) 【写真】大坂なおみ、コアラと戯れる 開幕して日本が2勝を挙げ、11月の決勝大会進出に王手をかけた。第2試合に登場した元世界ランキング1位で、同193位の大坂なおみ(26)=フリー=が15本のサービスエースをたたき込み、国内では570日ぶりの公式戦勝利。日本代表でのプレーは21年東京五輪以来となった。エースで同79位の日比野菜緒(29)=ブラス=も勝ち、13日に行われるシングルス2試合、ダブルス1試合のうち、1勝を挙げれば日本の勝利が決まる。 大坂のサーブが爆発した。バウンドしてから球が低く滑る速いコートの特性を生かし、面白いようにエースを量産でストレート勝ちだ。最速は時速194キロ。「サーブが非常に良かった。とても助けられた」と、15本のエースにニッコリだ。 相手はリターンで動き回る陽動作戦に出た。構える位置をめまぐるしく変えたが、大坂は「笑いをこらえるのに必死だった」と余裕の表情で「それだけ自分のサーブが良かった」と自信を得た。 カギは、第1セット2オールからの大坂のサービスゲームだった。15―40と2本のブレイクポイントを握られ、先にサービスゲームを落とすピンチを迎えた。しかし、ここでも2本のエースなどでキープ。最後まで一度もサービスゲームを落とすことなく、勝利へ突っ走った。 昨年7月に娘のシャイちゃんを出産。今年1月の全豪前哨戦、ブリスベン国際で約1年4か月ぶりにツアーに復帰した。国内では22年9月の東レ・パンパシフィックOP以来の実戦。ママになって初の日本でのプレーに「日本の国旗がたくさん振られて支えてくれたのは、最高のモチベーションになった。雰囲気も最高」と声援に勝利で応えた。 ママの顔がのぞいたのが、第2セットの第7ゲームだ。観客の子どもが泣き始め、プレーが止まった。それを見た大坂は「娘のシャイを思い出していた」と笑顔。母親が必死で会場の外に子どもを連れ出すのに「急がなくても大丈夫と思った」と、母親の心で寄り添い、プレーでも冷静にエースをたたき込み、相手を驚かせた。 国別対抗戦は20年2月の対スペイン戦以来だ。当時は精神的に不安定で、コートが苦手の赤土なこともあり、試合中に泣き出した。しかし、母になり、今年の復帰戦では「私は強くなった」。その言葉通り、母国で力強い「なおみママ」を披露し、日本に貢献してみせた。(吉松 忠弘) ◆ビリー・ジーン・キング杯 1963年に創設された女子テニスの国別対抗世界一決定戦。最上位の12か国が争う決勝を頂点に、その下に16か国が決勝大会進出をかけて予選を戦う。予選の下部には、世界を3地域に分けたグループがあり、各グループは1~4部に分かれる。1部を勝ち抜いた国が予選進出をかけてプレーオフを戦う。女子テニスのツアーを創設した一人で、象徴的な存在のビリー・ジーン・キングの名が冠されている。
報知新聞社