受刑者の「歯科治療」申し立ても治療日は3か月後に…札幌弁護士会が月形刑務所長に早期治療を要望
札幌弁護士会「治療時に虫歯が深刻な状況になっている可能性も」
札幌弁護士会は、月形刑務所側の回答を踏まえ「歯科医療を求めた収容者が治療を受けるまで数か月を要している」と指摘。週に1回しか歯科医療を行っていないことや歯科医師の都合によって午前か午後のいずれかで治療が実施されており、医療従事者の少なさによって治療までの期間がかかっていると主張した。 その上で、「刑事収容施設の中外にかかわらず、一般的に、患者が歯痛等を理由として歯科医師に治療を求める場合、(今回の事例のように「歯が痛い」と訴えているのであるから)症状が悪化していることが予想される。しかし、治療まで2~3か月かかるのであれば、その間に症状が悪化して治療を受ける時には虫歯が進行して刻な状況になっていることも想定される」「収容者は行動の自由を制限され、生活全般で規制を受けているため、その生命や健康維持を収容者の自助努力のみで行うことは困難である」とした。 多数の人間による集団生活の場である以上、保険や衛生に関する配慮は刑事収容施設での基本的要請であり、刑事施設でも医療法規が適用され一般の病院や診療所に求められている水準の医療が講じられなければならない。 そのため、人的・物的な面での制約を理由とした当該措置について、「あってはならない」(同前)としている。
月形刑務所「適切な医療が提供できるよう努める」
本稿記者の取材に応じた月形刑務所総務課の担当者は本件について、「人手不足などの影響もあり、この日しか治療日を確保できない状況だ」と回答。委託先の医師は月形町まで通える距離にいる医師であるとし、「今後は適切な医療が提供できるよう努めていく」とのみコメントした。 47都道府県が医師確保計画で定めている医師少数区と医師少数スポット「医療少数区域等」の一覧には、月形町の文字がある(今年4月1日現在)。月形町の人口は今年9月30日現在で2760人。この小さな町で起きた「医師不足」という騒動は、将来全国で問題となる可能性も大いに含んでいる。
小林 英介