王者・渡辺未詩vs挑戦者・辰巳リカ…東京女子7・20後楽園に向けてさかのぼる“白昼夢対決”【週刊プロレス】
7月20日、後楽園ホールでおこなわれる東京女子夏のビッグマッチ「SUMMER SUN PRINCESS'24」のメインイベントでプリンセス・オブ・プリンセス王座を懸けて激突する王者・渡辺未詩と挑戦者・辰巳リカ。この2人はこれまで二度シングル王座を懸けて激突しており、どちらも辰巳の勝利となっている。今回はその過去2回を振り返り、あらためて今一戦の行方を考えてみた。 '23年3月のIP王座戦
初めてのタイトルマッチは’21年2月11日の後楽園大会だ。その1カ月前の1・4後楽園で坂崎ユカを下し、プリプリ王座の初戴冠に成功している辰巳。その試合後、マイクを手に未詩が挑戦表明をした。「たくさん去年は成長できたので、今年はリカさんを超えたいです」と。 未詩が言う“去年”(=’20年)とは、白昼夢としてプリンセスタッグのベルトを保持していた時のことだ。11月のTDCホールで爆れつシスターズに取られてしまったものの、王座戴冠時(’19年11月)の未詩はキャリア1年10ヶ月ほど。まだまだ若手枠だったが、それでも頼れる存在と一緒に手にすることができたベルト。防衛も計4度果たしており、当然ながら成長にもつながっている。タイトルマッチというひりついた舞台は、若手ならなおさらに経験することができないのだから。 その前哨戦では「(辰巳は)三半規管が弱いってタッグ組んでる時から言っていたので、三半規管を弱めていきたい」とパートナーだからこその突破口を見つけていた未詩。前哨戦でも実際にぶん回し、辰巳の防衛ロード一歩目としてはかなりの難敵になることを強く予想させていた。 結果としては辰巳が防衛成功。ただグルグルに回されて「回って回って、もう何も…。アレが無重力っていう体験なのかなって(笑)。世界の終わりが見えました」と持ち前の狂気とワードセンスをのぞかせていたのが印象的だった。まだキャリアは浅いながらも、未詩が残したインパクトも相当に大きかった。普段組むパートナーだからこそ、この大一番でリング上で会話できたことも同じく大きかった。 そして2度目は’23年3月18日の有明コロシアム大会。立場は逆となり、インターナショナル・プリンセス王者が未詩で挑戦者が辰巳。同年2月の名古屋大会でジャナイ・カイを下して3度目の防衛を果たした未詩に、先述したプリプリ戦と同じくセコンドについていた辰巳がマイクを持って挑戦をアピールしたのがきっかけ。「リカさんはいつか超えたいって思ってた存在」と未詩が対戦を望んだことで同一戦が決まった。 その前哨戦ではお互いを「デーモン」「妖怪」と例え、普段のタイトルマッチとは一際異なる空気感となっていた。それぞれ意外と腑に落ちる例えだったため、百鬼夜行と例えた記憶がある。それはさておき、前回と同じくタイトルマッチに向けて強気な態度を保つ辰巳と、パートナーを超えることで…と向上心が止まらない未詩。初進出の有明コロシアムという舞台で2人はベルトを懸けて激突した。 決戦は予想通りの熱闘となり、20分近い闘いを制したのは辰巳の方だった。これで3大王座獲得のグランドスラム達成、しかも団体で唯一の存在となった。一方、敗れた未詩は涙を流しながらも「やっぱり隣にいる方が楽しいので。闘いたいけど、当分また隣で面白い景色を見てゲラゲラ笑いながら過ごしたい気持ちもあります」と前向きな一言。ベルトは手放してしまったが、前回と同様に白昼夢がタッグとしてより絆を深めたことは言うまでもない。 そして、この2つのタイトルマッチをそれぞれ終えた後、やっぱり2人は白昼夢だなと思った場面があった。それはどちらも敗れてしまった未詩だが…決して敗北を後に引きずることなく、試合後はなんとも清々しい表情をしていたことだ。パートナーとして常に横にいる存在だから、辰巳がいかに強いか知っている。それをあらためて実感したのもあるだろうが、それと同時に自身の成長も身を持って感じているのだろう。人は夢や目標があればあるだけ成長していける。その言葉になぞるのなら、未詩には常に未来が見えていた。もっともっと強くなっていく。そして辰巳にもいつか絶対に勝つ、と。 そうして訪れた3度目のタイトルマッチ。今回も未詩が王者で辰巳が挑戦者だ。辰巳はすでに狂乱気味で、これまでの前哨戦でも未詩をおおいに振り回している。だが未詩にとっては今年3月の両国国技館大会で山下を下して初めて手に入れたプリプリ王座。過去よりも明らかに団体を自分が引っ張っていくという思いが感じられ、責任感もより一層増した。 これまで1回も勝てていない辰巳を相手に3度目の防衛戦。未詩にとって難敵であることは間違いないが、だからこそプリプリ王者として迎え撃つ覚悟はできた。これまで辰巳と同期にあたる山下も中島もこのベルトをめぐる一戦で倒してきた。だからこそ、最後の関門に手を広げて立ちはだかる。 また、現在の東京女子で謳われている「新世代」としても負けられない。敗れることで時代が逆戻り…とはならないかもしれないが、ここ数カ月間、団体を最前線で引っ張ってきた自負はある。未詩は何よりも東京女子が大好きだから、その大好きをより形にしていくためにも防衛を続けていく必要がある。今回の相手との戦績は圧倒的に悪いが…仮にどちらが勝ったとしても白昼夢という関係性はずっと変わらないのだから、ここで相方に「大好き」を伝えた上で勝利することで未詩の新たなトビラが開きそうだ。
週刊プロレス編集部