直木賞受賞の荻原浩さん、作品作りについて「リズムを大切にしています」
第155回芥川賞・直木賞が19日夜、発表され、『海の見える理髪店』で直木賞を受賞した荻原浩さん(60)は「ホッとしています。肩の荷が下りたような。どのような賞にノミネートされた時でも、心の平安を保つために落ちる時のシミュレーションしか頭にないのですが、今回は逆のパターンが来てちょっと戸惑っています」と心境を語った。 【中継録画】第155回 芥川・直木賞、受賞者の記者会見
荻原さんは、5回目のノミネートでの受賞。デビューから今年で20周年。6月30日に還暦をむかえた。節目が重なった年の受賞に「皆さんも30歳、40歳の時に経験したと思いますが、(還暦を迎えても)何も変わることがなく、感慨もありません。ただ、せっかくそう思ってもらえる年でもあるので、気持ちを新たに頑張ってみようかな、と考えています。いろんなことにチャレンジしてもいいかな、と思います」と話した。 作品作りで大切にしているのは、リズムだと荻原さん。「音読して全体のリズムはどうかとか、今回の小説のリズムはどうなのかと思いながら執筆しています。それから、五感を大切にしています」。 また、「主人公が少年や少女だった場合、彼らが使っている言葉だけで書きます。主人公が年配者なら、新しい言葉を知りませんし、死語を多用します。自分を前面にださず、登場人物が話す言葉も、その人に合わせて書き分けているつもりです」と創作上の工夫を明かした。 埼玉県生まれ。今では東京在住期間の方が長くなったが、「いまだに区役所を市役所と言い間違えます。甲子園の高校野球でも埼玉県の高校を応援します。生まれ故郷は一生離れられないのだと自分では思います」と話した。 荻原さんは、広告制作会社勤務、フリーのコピーライターを経て、97年に『オロロ畑でつかまえて』で第10回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。『明日の記憶』で第18回山本周五郎賞、『二千七百の夏と冬』で第5回山田風太郎賞をそれぞれ受賞している。 (取材・文:具志堅浩二)