【イスラエル取材記・前編】数秒おきに断続的な砲撃音…快晴なのに“煙”でかすむガザの空
■「空が泣いている」…20歳のイスラエル兵の葬儀
11月1日。この日、イスラエル国内は19歳から24歳までの11人のイスラエル兵が戦闘で亡くなったというニュースで沈んでいた。移動中のカーラジオからは、女性が歌うもの悲しい曲が流れてくる。同行したイスラエル人によると、ある朝、突然姿を消した少年について歌った「彼がいた美しい日々に戻りたい」という歌詞だそうで、国全体が追悼ムードに覆われていた。 私たちはこの日、亡くなった20歳の兵士、ラビ・リフシットさんの葬儀の取材が許された。葬儀が執り行われたのはエルサレムにあるヘルツェルの丘。ホロコースト博物館や国立軍事墓地などがあり、追悼の山として知られている場所だ。葬儀会場となった屋外に設置されたテントの下には、普段着のまま大勢の人が続々と集まってくる。国民徴兵制のイスラエルでは、軍人が亡くなることは他人事ではなく、家族が死ぬことと同じ感情なのだという。 ユダヤ教のラビ(宗教指導者)の歌声と祈りの声が響く中、棺に土がかけられると、家族が抱き合って涙を流し、すすり泣く声がこだました。折しも空からは雷鳴がとどろき、土砂降りに。イスラエル人は「空が泣いている」と私たちに語った。 イスラエルとハマスの戦闘ではこれまでに、イスラエル側で1200人、ガザ地区では1万人以上が亡くなっている。イスラエル・パレスチナと関係なく、それぞれの死で1万回以上の涙が流されたことを想起し、命の重みを感じる日となった。
<【後編】へ続く>
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■筆者プロフィール
末岡寛雄 NNNニューヨーク支局長。日本テレビ報道局で宮内庁、厚労省を担当し、「news zero」のデスク、災害報道担当、サイバー取材班プロデューサーをつとめる。気象予報士。イスラエルへは2005年以来の再訪。趣味は音楽鑑賞。