【イスラエル取材記・前編】数秒おきに断続的な砲撃音…快晴なのに“煙”でかすむガザの空
■家族や報道陣でごった返すテルアビブの人質家族センター
イスラエルに到着してまず取材で訪れたのは、テルアビブにある人質の家族が集まるセンターだった。ハマスによって連れ去られたイスラエル人をはじめとする人質の家族が、情報を求めて詰めている場所で、支援者や報道陣でいつもごった返している。センターのすぐ側にある美術館前広場は、人質解放を求める関連イベントが行われる会場となっていた。人質となった200人あまりのポスターが掲示されているほか、帰宅を願って“安息日の食卓”が展示されている。 そこで私が出会ったのは、テルアビブから車で2時間以上かかるガリラヤ湖畔に住む男性。キブツ(=生活共同体)で息子が連れ去れられ、孫は亡くなり、息子の帰りを待って毎日、広場で情報を求めて立っているという。男性は凜(りん)とした姿で息子のポスターを持ち、私の目を見つめて「この非道なニュースを、世界に伝えてほしい」と静かに語った。
■数秒おきに砲撃音が…ガザ地区との境界からわずか2キロの町「スデロット」
“ガザ地区への最前線”として各国のメディアが中継を行う場所の1つが、ガザ地区との境界からわずか2キロにある「スデロット」という町だ。町中はハマスの攻撃を受けていて、警察署が跡形もなく崩壊していた。 初めて訪れたのは10月24日。町の高台では、世界各地から集まったメディアがガザ地区へとカメラを向けていた。この頃はイスラエル軍による地上作戦が行われる前で、数分おきに空爆の音が聞こえていた。 しかし、地上作戦を拡大した27日以降、スデロットを再訪した際には、短いときは数秒間隔で砲弾や戦車の音などが鳴り響いていた。さらに、目標を示す照明弾のような閃光(せんこう)がガザ地区へと落ちていく様子も、はっきりと見える。目の前を戦車が砂ぼこりを上げながら通り過ぎていく。高台からガザ地区へと目をこらすと、天気は快晴のはずなのに、攻撃による黒や白の煙でガザ地区の上空だけは空がかすんでいた。カメラをズームして見ると、黒焦げになった建物もとらえることができた。この煙の下で、市井の人々が危険にさらされ、亡くなっているのだ。