「メルカトル図法」が生む幻想...トランプ氏が狙うグリーンランドは「地図ほど大きくない」
<ドナルド・トランプ氏が再びグリーンランドの取得を目指す背景には、その「巨大さ」への認識が影響しているのだろうか。実は、地図が描くグリーンランドの姿には大きな誤解が隠されている>
次期大統領に選出されたドナルド・トランプ氏が最近、グリーンランドの取得に対する決意を復活させたことが注目を集めている。その理由として、彼がこの自治領を「巨大」だと考えている可能性がある。 【動画】家族に何が? トランプが、笑顔で近づく娘を「徹底無視」した瞬間を撮影...妻メラニアからは「キス拒否」 しかし、グリーンランドは多くの地図に描かれているほど大きくはない。 18世紀以来、標準的な地図投影法として使われているメルカトル図法では、赤道から離れるほど陸地が大きく歪んで見える。このため、南極大陸やグリーンランドは実際よりも大きく見え、特にグリーンランドは多くの地図でアフリカとほぼ同じ大きさに描かれている。しかし、アフリカの実際の面積はグリーンランドの14倍もある。 では、グリーンランドの本当の大きさはどれくらいなのか? グリーンランドの面積は、コンゴ民主共和国とほぼ同じで、わずかに小さい程度だ。 重要性 トランプ氏は、第1期の大統領任期中にグリーンランドの取得を提案した際、島の大きさがその理由の一部だったと、2021年にジャーナリストのピーター・ベイカー氏とスーザン・グラッサー氏に語っている。 「地図を見てごらん。私は不動産開発者だ。建物を建てる時に『この角の店舗を手に入れなきゃ』って考える。地図を見るのも似たようなものだ」とトランプ氏は述べた。 「私は地図が大好きなんだ。そしていつもこう言うんだ。『この大きさを見てくれ。とてつもなく大きい。これはアメリカの一部であるべきだ』とね」 2019年には、記者に対してグリーンランドの購入について「これは本質的に大規模な不動産取引なんだ。やれることはたくさんある」と語った。 知っておくべきこと 面積83万6000平方マイルのグリーンランドは、アメリカ本土の約4分の1の大きさだ。 「グリーンランドは世界最大の島だが、アメリカ本土よりはるかに小さい」と、コロラド大学ボルダー校の地理学教授で、国立雪氷データセンター の所長であるマーク・セレーズ氏は本誌に語った。 「メルカトル図法でグリーンランドを見て、それが巨大だと思う人は地理の補習が必要だ。私が喜んで教えるよ」と彼は続けた。 さらに、近年、北極圏の資源や戦略的な航路を巡って競争が激化しているが、「国が領土を主張するための土地はもう存在しない!そういった活動はずいぶん昔に終わった」と述べた。 北極圏では、コバルト、金、銀、銅、ニッケル、ウランなど、資源が豊富な地域を巡る事実上の国際的な競争が展開されている。グリーンランドには5万6000人の住民が住んでおり、その人口はニュージャージー州ホーボーケン市よりもわずかに少ない。この島は18世紀以来デンマークの一部で、1979年に自治権を獲得し、2009年からは独立した自治国となっている。さらに、グリーンランドには大規模なアメリカ軍基地もある。 トランプ氏のグリーンランドへの関心は新しいものではなく、第1期の任期中から購入を話題にしていたが、最近ではあらゆる手段でこの領土を取得する意思を示している。火曜日、彼はデンマークにグリーンランドをアメリカに売却させるため、軍事的または経済的な強制力の使用を排除しないと述べた。 トランプ氏は先月、Truth Socialの投稿でグリーンランド購入計画を再び表明し、「世界中の国家安全保障と自由のために、アメリカ合衆国がグリーンランドを所有し、管理することは絶対的に必要だ」と主張した。 火曜日の午後、彼の息子であるドナルド・トランプ・ジュニア氏は個人的な旅行としてグリーンランドの首都ヌークに到着したが、デンマークの政府関係者とは会わなかった。 人々の反応 デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は火曜日、デンマークのテレビ局TV 2のインタビューで「グリーンランドの首相であるムーテ・エゲデ氏は非常に明確な立場を取っており、グリーンランドの多くの人々が、この島は売りに出されるものではなく、将来もそうであるべきではないという強い支持を表明している」と述べた。 シラキュース大学の地理学および環境学教授であるマーク・モンモニエ氏は本誌に対し、「平面地図はすべて領域を歪めており、その程度はさまざまだ。メルカトル図法では、グリーンランドは南米大陸全体と同じくらいの面積を占める。トランプ氏は、アメリカとカナダの国境が人工的な線だと主張するが、その多くは緯度に沿っており、北極と南極によって固定された自然な幾何学的特徴だ。地球や地図上の線は一見すると恣意的に見えるかもしれないが、既存の地点や地形に基づいている」と語った。 火曜日、トランプ次期大統領はTruth Socialで「ドン・ジュニアと私の代表団がグリーンランドに着陸した。歓迎は素晴らしい。彼ら、そして自由世界には安全、安心、強さ、そして平和が必要だ!この取引は必ず実現しなければならない。MAGA。グリーンランドを再び偉大に!」と投稿した。 コロラド大学のセレーズ教授は水曜日、本誌に「これを真剣に受け止める人がいるとは信じがたい。グリーンランドはデンマーク王国の一部で自治権を持っている。デンマークがグリーンランドをアメリカに『与える』つもりは全くない。力によるグリーンランドの奪取は、馬鹿げた考えだ。デンマークはNATOの一員なのだから」と語った。 ポツダム気候影響研究所の海洋物理学教授であるステファン・ラームストルフ氏は水曜日、X(旧Twitter)に「トランプ氏がメルカトル図法に騙されてグリーンランドを欲しがっているのかどうかは分からないが、この機会に科学者仲間にもっと合理的な地図投影法を使用するよう改めて訴えたい。すべての地図作成ソフトウェアで簡単に選択できるのだから」と投稿した。 今後の展開 トランプ氏は、アメリカが「51番目の州」としてカナダを併合すべきだと繰り返し提案してきた。カナダもまたメルカトル図法の影響で実際よりも大きく見える。
キャサリン・ファン