就任直後は不眠に嘔吐、体重5kg減り…片岡安祐美が語る「野球監督の難しさと女子チーム創設の想い」
「当たり前だけど、礼儀や挨拶は大切。私たちは野球選手である前に、一人の社会人ですから」 ユニフォーム姿で大胆ジャンプ…!片岡安祐美「夫の素顔と直筆の意外な目標」写真 野球のクラブチーム『茨城ゴールデンゴールズ(以下、GG)』監督・片岡安祐美(37)は、面談した女性一人一人に自分なりの言葉でチーム方針を伝えた。 片岡が創設したのは『GG』の女子チームだ。1月28日に『GG』が拠点とする茨城県稲敷市で行われたトライアウトには、元日本代表を含む7人の女性選手が参加。ノックやフリー打撃、片岡自らによる面談などが行われ全員合格となった。片岡が女子チームへの想いと、就任直後は体重が5kgも減りトレードマークの笑顔を失った監督業の難しさを振り返る。 「以前からずっと女子チームを作ろうと考えていたんです。女子野球へ携わりたいと。でも『いつか、いつか』と思っているうちに月日ばかりが過ぎてしまいました。『とりあえずやってみよう』と決めたのが昨年末です。 私たちは稲敷市やファンに支えられて野球をしています。だからトライアウトを受けてくれた選手たちには、応援してもらえるように『まず人としてしっかりしよう』と伝えました。欽ちゃん(’05年に『GG』を作ったタレントの萩本欽一)に報告した時にもらったアドバイスは『言葉を磨きなさい』です。男子と女子両方のチームの監督は大変だと思いますが、ウザいぐらい一人一人と向き合って言葉をかけていきます」 ◆「対話はチームの要」 欽ちゃんからの忠告通り、片岡は言葉を大切にしている。好プレーをした選手には「マジでいいよ、メッチャかっこいい!」と大げさなくらい賞賛。怠慢プレーには「普段から考えて練習しなさいって言っているのにやらないから、こうなるんでしょう!」と大声を上げることもある。 「選手との対話はチームの要(かなめ)だと思うんです。相手や状況によって、言葉のかけ方も変えています。人によっては1対1で個別に注意し、あえて選手全員の前で叱る時もある。監督にとって大事なのは、選手たちが思い切りプレーできる環境作りですから」 今でこそリーダーとしての風格と自分なりの考えのある片岡だが、欽ちゃんから『GG』の監督を引き継いだ直後は苦労の連続だったという。監督に正式就任したのは’11年1月だ。 「当時の私は20代前半。欽ちゃんから『オレが辞めたらお前が監督をやるって記者たちに言っちゃったから』と伝えられ、『なんで私なの?』と戸惑いまくりました。コーチ経験もないのに、いきなり平社員が社長になるようなものです。周りは年上ばかり。当初は『ああしてください。こうしてください』と、敬語で指示を出していました」 ある時、試合前のミーティングで一人の選手が「今日は2ストライクまでボールを見ていこう」と提案する。片岡は消極的だなと感じたが彼の顔を立てて賛同。すると試合中に、ベテラン選手が「なんで2球も待たなきゃいけなんだ!」と反発しベンチを出て行ってしまった。片岡は、チームをまとめられない自分が悔しかった。 「反省しました。一度決まった方針にみんな納得していると思ったら、そうじゃなかったんですから。私にも迷いがありました」 悩みを抱え眠れない日が続く。食事のたびに嘔吐し体重は5kg近く減少。いつの間にかトレードマークの笑顔も消えた。 「本当にツラかった……。あれだけ大好きだった野球を辞めて、故郷の熊本に帰ろうと思いつめたほどです」 限界だった。片岡は選手を集めて、素直に気持ちを吐露する。 「年下だからナメられてはいけないと、感情を押し殺していたんです。このままじゃ潰れてしまうと思い、正直に悩みを打ち明けました。『助けてください。人生経験も野球のキャリアも皆さんのほうが上。意見を聞かせてください』と。選手たちからは『アユミが監督なんだから好きなようにやれ。一人で考え込まずなんでも話してほしい』と言われました。それからですね。気持ちが楽になったのは」 片岡は遠慮せず、チームメイトと対話するようになった。一人で決めず、練習メニューなどは周囲と相談。ベンチでもグラウンドでも感情を隠さずに出す。選手とのコミュニケーションを大切にし、意識的に笑顔を作り「彼女とどうなの?」と頻繁に声をかけるようになった。「言葉を大切にする監督」片岡の誕生である。 【後編:片岡安祐美の告白「2度の流産を乗り越え長男出産」幸せの試練】では、彼女を支える元プロ野球選手の夫との意外なデートや1歳半になる長男誕生までの試練を紹介する。
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