元日本代表・高原直泰がJ3移籍を決めた理由
期限付き移籍の期限は2015年1月31日まで。完全移籍ではないために違約金こそ発生しないものの、今シーズンの高原の年俸はSC相模原が原則として負担する。ヴェルディ側にとっても思い描いた状況となったはずだが、高原自身はヴェルディに対していっさいの嫌悪感を抱いていない。 「オレはヴェルディのことを悪く言いたくないし、逆にそういうことをオレに言わせないでください。オレが相模原で何をしたいかということだけを聞いて欲しい。そこはお願いします」 浦和レッズ時代の2010年、清水エスパルス時代の2012年にも、今回と同じような境遇に置かれた。最初はシーズン途中の7月に韓国Kリーグの水原三星に完全移籍して自分を取り戻し、2度目はミニゲームにも参加させてもらえない状況を甘んじて受け入れ、オフにヴェルディと契約した。 チーム事情で、自らが置かれる状況は180度変わる。周りが助けてくれることもまずない中で、自分の信念や哲学を信じて前へ進むしかない。高原が貫いてきた矜持は、SC相模原でもまったくブレていない。 SC相模原のホームページには、ホームのギオンスタジアム相模原で行われる次節4月6日のブラウブリッツ秋田戦での高原のデビューが大々的に謳われている。先着2000人に「高原直泰オリジナルポスター」がプレゼントされ、小・中学生以下の子どもたちはバックスタンドに無料入場できる。 移籍が発表された3月21日からSC相模原の練習に参加している高原は、すでに臨戦モードに入っている。背番号は「31」に決まった。 「限られた時間の中で自分自身も調整しなきゃいけないし、自分がプレーするに当たって、周りの選手の特徴も少しずつつかみながらやっている。チームも連敗しているから次はしっかりと勝って、上を目指せるように頑張っていきたい」 開幕から4試合を終えて1勝3敗。無得点試合が「3」を数えるなど、12チーム中で9位にあえぐSC相模原は何よりもストライカーのゴールを求めている。観客動員を含めたあらゆる期待を、高原はさまざまな経験を刻み込んできた大きな背中ですべて受け止めながら新天地のピッチに立つ。 (文責・藤江直人/スポーツライター)