【記者解説】ガザ侵攻はなぜ止まらない?~ネタニヤフ首相のジレンマ~
■大衆に広がる焦りと怒り…軍事作戦を支持する声
では、一般的な大衆はどのように考えているのだろうか。イスラエルでは各地で抗議デモが続いていて、実際にネタニヤフ政権の支持率も低迷している。人々のあいだには、ハマスの襲撃から半年以上が経っても人質が救出されない状況への焦り、いっこうに事態を打開できないネタニヤフ政権への怒りが広がっている。 一方で、軍事作戦の続行を支持する声も根強い。「人質を救出し事態を打開するためには、ハマスとの交渉ではなく戦闘しかない」と考える人も多くいる。
■兵役拒否した若者の訴え…「軍隊は暴力を継続させるだけ」
こうしたイスラエル社会のなかでも、「ガザ侵攻を止めるべきだ」と反戦活動を行う人たちがいる。2年前に兵役拒否して収監されたネーブ・シャブタイ・レビンさん(20歳)にオンラインでインタビューした。 イスラエルでは男女ともに18歳で徴兵される。ネーブさんはかつてヨルダン川西岸のパレスチナ人と交流を持ったことから、イスラエルによる占領に疑問を持ち、兵役拒否を決心。懲役刑を受け、130日間収監された。 ネーブさんは、イスラエル人とパレスチナ人には政治によって大きな分断が作り出されていると話す。両者が直接会って話す機会はほとんどないという。「もし占領の実態を目の当たりにすれば、誰もが疑問を持つだろう」。 ネーブさんは「イスラエル軍はガザ地区に破壊と混乱をもたらしている」として、交渉の即時合意と恒久的な停戦を訴えた。「軍隊は暴力を継続させるだけで、政治的解決にはつながらない。私は平和のために闘いたい」。 ◇◇◇ ネタニヤフ首相は戦闘休止の交渉に臨みつつ、強硬姿勢も見せ続けざるを得ないという、身動きのとれないジレンマに陥っている。 ネタニヤフ政権が国内の事情を優先させ、ラファへの侵攻に踏み切れば、市民にすさまじい犠牲が出ることは避けられない。国際社会が一丸となって自制を呼びかける必要がある。