【記者解説】ガザ侵攻はなぜ止まらない?~ネタニヤフ首相のジレンマ~
■ネタニヤフ首相に圧力かける“2人の人物”
実際にネタニヤフ内閣では、極右政党の党首が重要なポジションについている。ベングビール国家治安相とスモトリッチ財務相だ。 2人はネタニヤフ首相に「ハマスと交渉するのではなく壊滅せよ」とプレッシャーをかけ続け、連立政権からの離脱もほのめかしてきた。交渉が大詰めを迎えている戦闘休止案にも強く反対し、ラファ侵攻に踏み切るよう迫っている。
■イスラエル極右の「入植活動」…矛先はガザ地区にも
極右政党の主張する「ハマスを壊滅してガザ地区をユダヤ人のものにする」という考え方は、一体どういうことなのだろうか。 イスラエルの極右と呼ばれる人々は、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸で「入植活動」を行っている。彼らはヨルダン川西岸を含む一帯を「神がユダヤ人に与えた土地」だと考えていて、パレスチナ人を一方的に追い出して占領している。国連安保理はこの「入植活動」を国際法違反として、即時停止を求める決議を採択した。 実はかつてはガザ地区にも「入植地」が存在し、2005年に撤退したという経緯がある。極右勢力のなかでは、ハマスとの戦闘が長引くにつれ、「ハマスを壊滅した後、ガザ地区に再入植すべきだ」という強硬論が勢いを増している。
■入植者団体メンバーの主張…「ハマスを壊滅すべき」
今回、入植者団体「ヒルトップ・グループ」のシュモリック・ファインさん(30歳)にオンラインでインタビューした。 このグループには10代から50代まで数千人が所属し、ヨルダン川西岸で入植活動を行っている。4月にはEU=ヨーロッパ連合から「パレスチナ人に対する深刻な人権侵害を行っている」として制裁が発表された。 シュモリックさんにガザ地区への再入植について問うと、「神様がユダヤ人にこの地を約束してくれた。パレスチナ人でもアラブ人でもなかった」「イスラエルは世界へ向けて、ガザ地区がユダヤ人の町であったことを説明する必要がある」と語った。 シュモリックさんは、極右政党党首のベングビール国家治安相を支持している。現在行われている交渉についても、「交渉に応じるのではなくまずはハマスを壊滅すべきだ」という考えだ。その理由として、「拘束されているパレスチナ人が人質と交換で釈放されれば、彼らは必ずイスラエルでテロを起こすだろう」と主張した。