「石丸伸二氏」「斎藤元彦知事」「玉木雄一郎氏」が変えた選挙の常識 「既存政党」「マスメディア」の衰退で2025年「SNS巧者」が大量当選するか
再現性の高い選挙手法とは
ただし、昨年行われたソーシャルメディアによる影響が顕著だった選挙、つまり、都知事選、衆院選、兵庫県知事選のうち、都知事選と兵庫県知事選にはほかの政治家には真似できない特殊な側面があります。例えば、石丸さんは細かな政策よりも、自らの「政治スタンス」を強く訴えていました。それは政界のアウトサイダーを自任するかのような「政治屋の一掃」という言葉に象徴的に表れていました。政策なら誰かが誰かの真似をすることは容易ですが、政治に向き合うスタンスはほかの政治家が真似しようと思っても、なかなかできることではないでしょう。 兵庫県の斎藤知事に至ってはさらに特殊です。マスコミ報道によって猛批判にさらされる中で全国的知名度を獲得し、その後県議会で全会一致の不信任決議を受けて失職したうえで再度立候補に至るプロセス自体がかなり特殊ですし、選挙戦に入ると「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首が斎藤知事を当選させるために自ら立候補してサポートする、事実上の二馬力選挙になったという点も特殊です。強力なインフルエンサーが自ら立候補してまで側面支援したことによって、斎藤さんは支持を伸ばした。これは別の候補者が再現しようとしてもなかなかできるものではありません。 一方、衆院選における国民民主党のやり方は、石丸さんや斎藤さんと比べれば再現性の高い選挙手法と言えそうです。 衆院選では、各政党がネットに力を入れていました。自民党など、他の政党も公約を訴える動画を作ってはいたものの、一つの動画にマスマーケティング的に広告費を投下しているだけなので、再生回数は多くても、「いいね」は少なく、恐らく実際の票には殆どつながっていません。かたや、国民民主党は明確にターゲティングして多くのショート動画を作成していました。全体として「手取りを増やす」というキャッチフレーズを用いて、若い世代をターゲットにはしながら、全員に同じメッセージを届けるのではなく、「103万円の壁」や「ガソリン暫定税率廃止」など政策ごとに動画を作り、それぞれの政策に関心のある層にメッセージを届けようとしていました。そのため、動画の再生回数は少なくともエンゲージメントが高かった。民間の広告運用としては当たり前のセオリーなのですが、それを国政選挙に初めて本格的に持ち込んだのが国民民主党だったと言えます。