ファーストサマーウイカ、『光る君へ』ききょう役を背負い続けた1年 髪も姫カットにして「常に忘れないように」
定子の死後、ききょうが定子の衣装を着て登場する場面があり、SNSでは「清少納言が定子さまの形見の着物を着ている」などと話題に。ウイカもこの衣装は特にお気に入りだという。 「定子様が着ていた着物を着たとき、衣装さんに『これ定子のですよ』と言われて『うわ~!』って涙が出そうになるくらい、形見を着ているところはグッときました。それを説明するところはないですけど、気づいてくださっている視聴者の方がたくさんいらっしゃって、驚きましたしうれしかったです。そういうバックボーンを彩って役にパワーをくださるスタッフ陣のプロの技に本当に感謝でした」 本作で風俗考証を担当している佐多芳彦氏も絶賛したというウイカの着物の所作については「練習しました」と胸を張り、限られた登場シーンの中でしっかりとキャラクターを表現するために、一瞬一瞬に全力を尽くしたと語る。 「限られたわずかな時間でキャラクターを印象づけることも、登場人物の多い物語では必要なことだと考えています。怒り心頭なききょうのシーンが放送されて、いろんな反響がありましたが、定子がいなくなってからの彼女の数年をあの数分で表現しなければならないという任務があると思うと、どれだけ濃度を高めて出せるかというのは大切にしていました」
「濃密に刻まれた1年」「一生の財産に」 反響にも喜び
近年、ドラマや映画への出演が増え、本作でさらに女優としての存在感を高めたウイカ。自身にとってもかけがえのない経験になったようだ。 「1年かけて、しかも1年ほぼフルで出させてもらい、ききょうを背負い続け、生き続ける1年間。常に頭の端にあって、大河のことがよぎらない瞬間はなかったですし、常に忘れないように姫カットにして、髪型の話を振られたら『今大河やってるんで』『平安で』って(笑)。常に自分に大河を課そうとした1年で、それが心地よい瞬間もあれば、重圧も。でもそうあるべき、そうじゃないとできないと思っていました」 そして、本作で得たものが体にしっかりと刻まれた感覚があると語る。 「どこかに“ききょう”というタトゥーが入ったんじゃないかというぐらい(笑)。ここで得た経験は一石何鳥なんだろうと。飛び級したような、ここでしか得られない学びと経験がありました。私が今後、エッセイを書くことばあれば、『光る君へ』のことは必ず書くし、走馬灯を見るときには必ず出てくるだろうなと。濃密に刻まれた1年でした」 大河ドラマ出演の反響の大きさも明かす。 「家族や周りの人たちが喜んでくれたのはもちろんですが、今まで認知度の低かったご年配の層にも知っていただけたのはとてもうれしかったです。バラエティ番組のロケで、洋服を着ていても『清少納言!』と声をかけていただいたりして、光栄でした」 もともと役者を目指して芸能界に飛び込み、アイドルやタレントとして活躍する以前から舞台に多数出演していたウイカ。多才ぶりを発揮し活躍の場を広げているが、今後もジャンル関係なく何でも挑戦していきたいと考えている。 「役者を目指して22歳で上京してきましたが、本当にいろんな経験を経てきました。芝居もバラエティ番組も音楽活動も全て繋がっているし、どれも同じだけ向上心と興味がある。最近では声優仕事もいくつかやらせていただいて、勉強して今後もどんどん挑戦したいと思っています」 最後に、「本作にクランクインする前の自分に何か一言かけるとしたら?」との質問に、「今回の撮影で得た経験は一生の財産になるし、『光る君へ』に出てなかった俳優人生は考えられないし、ききょうという役に出会ってなかったと思うと怖い、恐ろしいなと思うくらいここで得たものがあったので、一生忘れない。体に刻印してもいいくらい、自分の中に刻み込まれた1年だった」と回答。かけがえのない経験ができたことに感謝していた。 ■ファーストサマーウイカ 1990年生まれ、大阪府出身。高校卒業後すぐ、地元の劇団で約5年間活動。2013年にアイドルグループ「BiS」に新メンバーとして加入しメジャーデビュー。2014年7月横浜アリーナの単独公演で「BiS」が解散。2015年よりNIGOとBiSマネージャーの渡辺淳之介の共同プロデュースで音楽グループ「BILLIE IDLE」を結成。ライブを中心に活動し、2019年12月解散。現在はバラエティ、ドラマ、ラジオなど多岐にわたって活動している。NHKでは、『不可避研究中』でMCを担当。連続テレビ小説『おちょやん』、特集ドラマ 創作テレビドラマ大賞『家出娘』、夜ドラ『超人間要塞ヒロシ戦記』ほかに出演。大河ドラマは『光る君へ』が初出演。 (C)NHK
酒井青子