「トランプ大統領」の出現を19世紀に予見した男、アレクシ・ド・トクヴィル
「アメリカ民主主義の本質的欠陥を体現する最新の民衆扇動家」
一方でトクヴィルは、自己利益が利己主義に堕落し、理性ではなく感情的な訴えが有権者に響き、権力が中央集権化して、民主主義が多数派の専制、ひいては専制君主の支配下に置かれることを危惧した。全ての市民が同じ権利と機会を共有し、一つの文化的共同体に融合しない限り、奴隷制という分断の遺産が民主主義を破壊するだろう。トクヴィルはそう警告した。 トクヴィルは、トランプをアメリカの民主主義の本質的な欠陥を体現する最新の民衆扇動家と見なし、こんにちのアメリカに「アメリカの退化」の多くの兆候を見るだろう。「多数派の意思」に反対して民主的政府の正統性を否定する「虐げられた」少数派の白人を、トランプは擁護する。 トクヴィルから見れば、トランプはアメリカの民主主義の基盤を破壊する過程にいる。アメリカの「見識ある自己利益」は分裂的でゼロサム的な集団や個人の要求へと劣化し、民主主義を支えるコンセンサスによる市民文化をトランプは拒絶する。 ボストンに戻る列車から見たいくつかの建物は、1831年かそれ以前のものだった。トクヴィルも目にしたかもしれない。彼は確かに、トランプが現代のアメリカで体現していることの多くを予見していた。 トクヴィルの時代も今も、アメリカの問題は、「エ・プルリブス・ウヌム(多様なものを一つに)」という合衆国の理想を実現できるかどうかだ。そしてトランプの答えは──「理想は要らない」である。
グレン・カール(元CIA工作員・本誌コラムニスト)