政界を揺らす転機!…闇将軍・田中角栄を破った意外な人物による「最悪の裏切り」
安倍元首相が国士と賞賛した葛西敬之が死の床についた。政界と密接に関わり、国鉄の民営化や晩年ではリニア事業の推進に心血を注ぎ、日本のインフラに貢献してきた。また、安倍を初めとする政治家たちと親交を深め、10年以上も中心となって日本を「事実上」動かしてきた。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 本連載では、類まれなる愛国者であった葛西敬之の生涯を振り返り、日本を裏で操ってきたフィクサーの知られざる素顔を『国商』(森功著)から一部抜粋して紹介する。 『国商』連載第20回 『波乱要素が大きすぎる…「国体護持派も恐れた」国鉄分割のMVP・葛西敬之に対する「過剰すぎる」対応』より続く
転機となった創政会の旗揚げ
国鉄が単なる民営化ではなく、分割民営化に向かう決定的な転機は、1985(昭和60)年に訪れる。この年の2月7日、竹下登や金丸信といった田中派の重鎮たち40人が結集し、政策勉強会を立ち上げた。創政会と命名されたそれは事実上、派閥の創設だった。 ここがのちに経世会となり、現在の平成研究会として自民党のマジョリティを握っていく。田中にとって子飼いの竹下が派閥を割って出たのは明らかだ。息子のように寵愛してきた小沢一郎も創政会に参加した。ロッキード事件公判を欠かさず傍聴してきた小沢の裏切りは、最もショックだったと伝えられる。以来、田中はスコッチウイスキーのオールドパーを浴びるように飲むようになった。そして、創政会旗揚げのわずか20日後、脳梗塞に倒れて入院する。闇将軍の時代はここから瞬く間に終焉に向かった。
権力構造の変化
言ってみれば、これは中曽根康弘が田中角栄という闇将軍の軛から解き放たれた瞬間だった。これまで最大派閥に遠慮してきた首相は、田中支配から抜け出す好機を見逃さなかった。田中が病に倒れたという事実は、まさしく政界を揺らした。権力構造の変化を感じ取ったのは、中曽根だけではない。そしてここが国鉄改革の大きな転機となったのである。 改革三人組と気脈を通じてきた三塚は、田中角栄が脳梗塞に倒れた85年の12月、第二次中曽根第二次改造内閣で運輸大臣として初入閣した。三塚は国鉄改革の主導権を握り、井手や松田も国鉄本部に呼び戻された。 国鉄の分割民営化路線は政官業それぞれの複雑な思惑が交錯し、中曽根、瀬島、三塚、葛西のラインで進められることになる。葛西たち国鉄改革三人組は第二臨調の描いた設計図に従い、中曽根政権の前線部隊として働いた。
森 功(ジャーナリスト)