大は小を兼ねない!料理のプロが明言「フライパンは20㎝でいい」
「たくさん作ったほうがおいしい」とは限りません。小さいフライパンをおすすめする理由
毎日の料理の手間や負担が減らせる調理器具があれば、ごはん作りはラクになる、そしてよりおいしくなる! お掃除を自動掃除機に頼るなら、料理も便利な道具を活用しませんか? 100均だけどすごい! 料理のプロが絶賛する「本当に使える卵グッズ」 アイデア溢れる料理家としても人気の高い稲田俊輔さんが、おすすめの製品を使った夕ごはんに役立つオリジナルレシピを提案します。忙しい家庭にとって一番惜しいのは「時間」。優秀な調理器具や調理家電で貴重な時間を手に入れる=【お金で解決しよう!】という連載です。
時代が変わればレシピが変わり、レシピが変われば調理器具も変わります。昭和40年代くらいの料理本を見ていると、レシピの分量は6人前以上が基本です。中には「煮物はたくさん作らないとおいしくなりません」というキャプションと共に、10人前の材料が書いてあるものもありました。大根一本を煮物で使い切るのも当たり前です。 そんなレシピの工程写真は、今の感覚だと、家庭料理というよりむしろお店の仕込みか何かに見えます。大きな両手鍋と木の落とし蓋、四角い蒸し器、魚焼き網、といった今の家庭にはあまり無さそうな調理器具も次々と登場します。 当時台所を預かっていたのは主に専業主婦ですね。毎日この物量の買い物をして、魚を三枚におろしたり、当時はまだ骨付きが当たり前だった鶏もも肉の骨を外したりみたいなところから始まって、全てを一から作っていたわけです。買い物はスーパーではなく、商店街で八百屋さんや魚屋さんを回ります。醤油や味醂は一升瓶が、ビールの大瓶のケースと共に、酒屋さんから配達されます。 ほんの半世紀少々前のことでしかないのに、なんだか異世界のようです。情景をリアルに想像するのはなかなか難しく、なんとか思い浮かべようとしても、それは概ねサザエさんの絵柄です。ビールを配達してくれるのは三河屋のサブちゃんですね。 その後世の中は徐々に変化していきます。核家族化が進み、少子化が進み、共働きが当たり前となり、非婚化も進行中。レシピも調理器具も当然変わりましたが、それでもまだ今のところ「4人前」のレシピは普通で、鍋も4~6人前相当のものが標準だったりします。 4年前、僕が初めて出したレシピ本はカレーとインド料理の本で、そこではほぼ全てのレシピを2人前、そしてそれを作る鍋は直径18~20cmのテフロンフライパンとしました。その方が時代に合っていると思いましたし、なによりその量なら、気負わず気軽に作れます。 カレーは大きな鍋でたくさんの量を長時間煮込んで作るもの、というイメージをいったん取っ払いたいというのもありました。南インドカレーはそもそも比較的短時間で作れるものだったからです。気軽に作りやすいレシピなら、少しでも余裕があればカレーを一度に2種類、3種類と作ることも容易で、お店みたいな楽しみ方もできます。 カレーに限らず煮物全般において「たくさん作るとおいしい」というのは、半ば迷信的な部分もあります。調味料を正確に計量し、水分を調整し、適切なサイズの鍋を選べば、たくさん作るのと同じ味は再現できます。小型テフロンパンは、そのための鍋として概ねベストな選択なのです。 カレーもそうですが、「さっと炒めてから煮る」というのは煮物の基本パターンでしょう。この場合、そもそも炒める作業に最適化されているフライパンが快適なのは言うまでもありません。 大きな鉄鍋で大量の煮物を作るなら、まず油を熱して鍋肌に馴染ませ、温度が下がらないよう材料をひとつずつ加えていく、という作業には確かに合理性があります。しかし少量であれば、テフロンパンをデジタルスケールに乗せ、そこに「炒めるもの」を計量しながら全て入れ、そこからおもむろに火にかける、という作業に置き換えることが可能になります。これがまたすこぶる快適なのです。 小鍋と違ってフライパンなら、口径が小さめのものでもガスコンロの炎がはみ出しにくいので、火力を上げやすいのもメリットです。沸騰までの時間を最小限にできますし、水分を飛ばして煮詰めたい時もあっという間。ぴったりはまるガラス蓋があれば、蓋をして煮込んでいる最中も中の様子がわかりやすいですし、少量の水分で蒸し煮のようにする時も便利です。 以前にも少し書きましたが、炒める工程でも、混ぜる時も、お皿に移す時も、シリコンベラとの相性は抜群。ぜひセットで揃えてください。お皿に移したら、鍋の柄を持った手は決して離さず、そのまますぐに洗うのが料理上手です。その時の洗いやすさもまた、小型テフロンパンのメリット。 *ただし、鍋が極めて高温になる炒め物や焼き物の直後は、少し冷ましてから洗ってください。