安倍晋三も頼りにした日本財界の黒幕・葛西敬之が静岡県川勝知事と真っ向から対立したワケ
安倍元首相が国士と賞賛した葛西敬之が死の床についた。政界と密接に関わり、国鉄の民営化や晩年ではリニア事業の推進に心血を注ぎ、日本のインフラに貢献してきた。また、安倍を初めとする政治家たちと親交を深め、10年以上も中心となって日本を「事実上」動かしてきた。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 本連載では、類まれなる愛国者であった葛西敬之の生涯を振り返り、日本を裏で操ってきたフィクサーの知られざる素顔を『国商』(森功著)から一部抜粋して紹介する。 『国商』連載第2回 『東大に93人、京大に33人、旧帝大に70人…日本財界の黒幕が作った学校のスパルタ教育とスゴすぎる進学実績 』より続く
美しい国
今に始まったことではないが、ときの政権はこうした第三者の有識者会議の意見をお墨付きにして政策を打ち出す。第一次安倍政権では「美しい国づくり」を政策の根っこに掲げてきたが、それは葛西のしばしば用いる表現でもあった。ちなみにこの教育再生会議には、のちにリニア新幹線問題で対立する静岡県知事の川勝平太も委員に加わり、賛同している。12月21日の第4回会合で川勝は言った。 「伝統を継承して新しい文化を創造する。その新しい文化を現時点で受けとめるならば、これは『美しい国づくり』に尽きているかと存じます。そこにどのようにわれわれの教育再生の理念を落とし込んでいくか、ということだと思うわけであります」 今ではリニア反対の急先鋒のように見られ、選挙になると市民活動家から支援を受ける静岡県知事だが、この頃はむしろ安倍政権の教育政策をバックアップしていた。教育再生会議ではもっぱら葛西の唱える教師重視について賛意を示している。 「『社会総がかり』が一番の基礎である。そしてその次に大切なのは、何といっても教師であります。したがって、3番目に『恩師に出会える学校』とありますが、これが2番目に来るべきであると存じます。いかなる教育も優れた教師に出会わない限り、これは教育の任務を果たすことができません」