スプリンターズS、新鋭サトノレーヴは戦国スプリント路線の天下を獲れる器か
秋のGIシリーズ開幕を飾るにふさわしい好メンバーが集った、今年のGIスプリンターズS(9月29日/中山・芝1200m)。そのなかに、GI馬やGI実績豊富な"旧勢力"を差し置いて、最も注目を集めている"新興勢力"がいる。 【画像】サラブレッドと局アナ レース当日にも1番人気が予想されるサトノレーヴ(牡5歳)だ。 ここまで9戦して7勝、2着1回、4着1回。GI出走は今回が初めてとなるが、直近2戦のGIIIで連勝を飾って、ここへ駒を進めてきた。 とりわけ、この馬の評価をグンと高めることになったのは、前走のGIIIキーンランドC(8月25日/札幌・芝1200m)で見せた圧巻のパフォーマンスだ。GIでも常に上位争いを演じているナムラクレア(牝5歳)をはじめ、粒ぞろいのメンバーがそろった一戦において、まさに横綱相撲の競馬でライバルたちを難なくねじ伏せたのである。 スタートしてすぐにスッと逃げ馬の直後につけ、道中はそのまま3~4番手の好位をキープ。直線に向くや、いち早く馬群を抜け出して、あとは後続を突き放す一方だった。結果、2着に1馬身半差をつけての完勝だ。 その勝ちっぷりを目の当たりにした競馬専門紙記者が唸る。 「その前のGIII函館スプリントS(6月9日/函館・芝1200m)は、内枠を引いた馬しか上位にこられない馬場にあって、2枠4番という好枠から発走して勝利。メンバーにも恵まれていましたから、次はどんなものかと半信半疑で見ていました。すると、函館SSよりも一段レベルが高いメンバーを相手に、まさしく正攻法の競馬で普通に勝ってしまいましたからね。『これは強い!』と。本番に向けて、値打ちのある競馬をしたと思いました」
この専門紙記者によれば、サトノレーヴはデビュー戦で早くもスプリンターとしての才能の一端をうかがわせていたという。 それは2年前の4月、中山・芝1600mの3歳未勝利戦。仕上がりの遅れたサトノレーヴは、3歳春のこのレースが初陣となった。無論、出走馬の大半がすでに一度はレースを走っている経験馬だったが、それらを相手にサトノレーヴは鮮やかな勝利を遂げた。先の専門紙記者が言う。 「未勝利戦において、初出走の馬が経験馬相手に勝つというのは、容易なことではないんです。実際、このレースでも初出走馬がほかに何頭か出ていましたが、サトノレーヴ以外はすべてふた桁着順に沈んでいます。 そんななか、サトノレーヴは経験馬相手に快勝。加えて、そのレースぶりに目を見張るものがありました。ゲートが開くと、苦もなく2番手につけたのです。これまた、スタート直後になかなかスピードに乗れない初出走馬には、簡単にできることではありません。 おそらく陣営は、この時のテンのスピードを見て、この馬のスプリンターとしての一級品の素質を見抜いたのでしょう。それゆえ、その後は1200m戦を中心に使うことになったのだと思います」 1600m戦でデビュー戦を飾りながら、以降は1200m戦を中心にスプリント路線に特化していったサトノレーヴ。陣営のこの選択は功を奏し、2戦目こそ2着に敗れたものの、3戦目からは3連勝を決めて一気にオープン入りを果たした。 ただ、サトノレーヴには走る馬によくあると言われる、ツメに弱点があった。オープン入りした昨年の春にその状態が悪化。そこから、およそ10カ月間の休養を強いられた。 そして、戦列に復帰したのは今年の2月。馬券圏外となる4着に沈んだ。 だが、これは長期休養明けに加えて、予定していたレースを賞金不足で使えなかったため。しかも、適距離より1ハロン長い1400m戦で、なおかつ、それなりのメンバーが集結したGIII阪急杯(2月25日/阪神)だったこともある。敗因は明白だった。 それを証明するように、その後は再び上昇気流に乗って、リステッド競走の春雷S(1着。4月14日/中山・芝1200m)を皮切りに、先述の重賞2戦を含めて破竹の3連勝中である。 ここまでに至るプロセスは、間違いなく"スプリント界のエリート"のそれ、と言っていいだろう。