【今行きたい大人の滋賀旅行】「やまなみ工房」で近江牛カレーとアウトサイダーアートを堪能
2021年にオープンしたパティスリー「IROTUYA(いろつや)」で手土産を購入。左は、黒い生地に自家栽培によるエディブルフラワーの花弁を散りばめたクッキー「黒丸」。右は、竹炭と天日塩を混ぜ、マーブル模様のアイシングで仕上げたクッキー「黒角」
いよいよ工房見学へ。「やまなみ工房」では、現在97人もの作家が所属する。18歳~80歳という幅広い年齢層が、それぞれに好きな作品を好きなタイミングで手がけている。50代から「やまなみ工房」に通いはじめたという鉛筆画の井上 優さんは、何事にもまじめに取り組む性。身丈を越えるほどの大きな作品も、1日3時間、約3週間の期間をかけ丁寧に塗り込み完成させる。彼に会いに多くの人々が訪れる人生を、きっと彼自身が一番想像すらしなかった事だろう。
墨汁と割り箸1本のみで次々に作品を生み出してゆく岡元俊雄さんは、寝転がり肩肘付いた独特のスタイルで描く。モチーフ全体を見ながら素早く筆を走らせ、飛び散った墨汁の滴や擦れ合わさった線が絵に躍動感をあたえていく。細かい米粒状の陶土を丹念に埋め込んだ作品を手がける鎌江一美さんは、思いを人に伝えるのが苦手。コミュニケーションのツールとして、振り向いて欲しい男性をモデルに立体像を作り続けている。わずか1時間ほどの滞在で、十人十色の作家たちに圧倒される。無心に自分の表現を貫くその光景は、まったく生きる底力に溢れる迫力があり感動的だった(工房見学は要予約)。 「やまなみ工房 CAFÉ DE BESSO(カフェ デ ベッソ)」 住所:滋賀県甲賀市甲南町葛木872 電話:0748-86-0334 BY TAKAKO KABASAWA 樺澤貴子(かばさわ・たかこ) クリエイティブディレクター。女性誌や書籍の執筆・編集を中心に、企業のコンセプトワークや、日本の手仕事を礎とした商品企画なども手掛ける。5年前にミラノの朝市で見つけた白シャツを今も愛用(写真)。旅先で美しいデザインや、美味しいモノを発見することに情熱を注ぐ。