入所者に優しく話しかけるイルファンディさん(左)。県内の介護施設で外国人材の登用が増えている=東みよし町のシェーンブルン

　介護分野の働き手として外国人を活用する事業所が県内で増えている。徳島労働局によると、医療・介護関連の事業所で働く外国人労働者は、2023年10月末時点で10年前の約4・6倍の706人。生産年齢人口が減る一方で高齢化は進み、深刻な人手不足が続いていることが背景にある。国が外国人の受け入れ枠を広げているのを受け、徳島にも多くの人材が送り出されている。一方、徳島で経験を積んでも都市部に流れる人材は少なくなく、定着が課題となっている。 全国長寿ボウラー番付、女性の部・徳島市の泉さん（89）が２年連続横綱　日本ボウリング場協会が発表 　高齢者福祉施設を運営する健祥会グループ（本部・徳島市）では、県内の介護職員千人余りのうち、外国人は4月時点で約200人。8年前から倍増した。ほとんどが20代。北池桂子人事部長は「体力を必要とする業務もあり、若い世代が来てくれるのも大きい」と話す。 　グループは09年から経済連携協定（EPA）に基づき介護福祉士の資格取得を目指す人材を海外から受け入れており、外国人職員の大半を占める。3年の実務経験があれば受験でき、受かれば在留資格を得られる。日本語教育や試験対策に力を入れ、ここ5年の平均合格率は約70％と、EPAに基づく外国人受験生全体の約50％を大きく上回る。 　老人保健施設健祥会シェーンブルン（東みよし町）で働き、本年度に受験するインドネシア出身のムハンマド・イルファンディ・フタガルンさん（25）は「勉強をよくみてくれてありがたい。母国で働くよりも給与がいい。合格して日本で住み続けたい」と笑う。 　課題は定着するかどうか。グループによると、毎年数人は離職し、生活の利便性の高い都市圏に流れる。徳島にはないインターナショナルスクールに子どもを通わせたいという理由が多いという。 　国は17年、日本で学んだ技術を母国に持ち帰って伝えることを目的とした「技能実習」に介護を加えた。19年には人手不足に対応するための在留資格「特定技能」をつくり、介護人材を受け入れている。こうした動きを受け、新たに外国人を採用し始めた事業所も多い。 　地域密着型特別養護老人ホーム花どけい（藍住町）では、4年前からベトナム人技能実習生2人が働き、今年は特定技能でインドネシア人2人が加わった。日本人はハローワークに募集をかけても反応はなく、人材派遣会社に頼めば手数料が高く、簡単に手を出せないという。 　前田洋子施設長は「外国人の採用に苦労はあまりない。給与は日本人と同水準で、受け入れの仲介を担う監理団体に払う費用など、上乗せされるコストはあるが必要だと認識している」と話す。 　一方で、途中で帰国した外国人も1人いた。「いつやめられるかもという不安はある。その場合に備えて、監理団体からは常に情報を収集したい」とする。 　供給側の動きも活発だ。外国人材の教育と紹介事業を手がける「ONODERA　USER　RUN」（オノデラユーザーラン、東京）は、ミャンマー、フィリピンなど4カ国に五つの学校をつくり、無償で特定技能人材を育てている。福祉関係を中心に約4千人を日本に送り、徳島にも8月末時点で51人の介護人材を紹介している。 　中四国営業部の柿﨑翔太部門長は「介護の仕事はコミュニケーションが必須。外国人の採用に懐疑的な事業所は一定数ある」としながらも「採用を考える事業者は増えているのでニーズに応えられるよう、さらに学生を確保したい」と意気込む。県も昨年度からオノデラに委託し、事業所から外国人材の採用の相談に乗るなどするマッチング事業を開始。3月末時点で2法人6人の外国人採用に結び付けた。 　国は介護分野など特定技能の24年度から5年間の受け入れ上限を、19～23年度の2倍の約80万人に広げている。外国人材の活用がさらに増えることが確実視される中、採用や定着に向けて事業所の自助努力だけでなく、行政がどれだけサポートできるかが鍵になる。