屯田兵の生活伝える「幻の書」復刊 子孫らの団体、歴史や実像知ってほしい
明治期に北海道の開拓やロシアからの防衛を担った屯田兵制度が創設されてから今年で150年になるのを記念して、屯田兵の子孫らでつくる「北海道屯田☆(人ベンに貝の目が組のツクリ)楽部」が、当時の生活状況を伝えながら原本がほとんど残っておらず「幻の書」とされてきた本を復刊した。梶田博昭(かじた・ひろあき)会長(73)は「教科書から屯田兵が消えゆく今こそ、歴史や実像を伝えたい」と話す。(共同通信=出川智史) 復刊したのは「開拓使最初の屯田兵 琴似兵村」。琴似(現在の札幌市西区)に入植した会津出身の屯田兵の子で、道庁にも勤務した山田勝伴(やまだ・よしとも)氏が1944年にガリ版刷りで出版した。戦時下でインキが足りず、200部しか刊行されなかった。屯田兵研究の基礎とされてきたが、図書館で原本の複写が許されるのみだった。梶田さんは昨年、インターネットオークションで複写版を発見し、復刊を思い立った。 制度は1874年に創設され、全国から家族も含めて約4万人が北海道に移住。約千人で兵村を形成した。山田氏は自身の経験や言い伝え、自ら集めた資料を基に兵村の暮らしを屯田兵や家族の視点で書き記した。
娯楽として登山競走やハクチョウの狩猟をしたことや、札幌・藻岩山麓の火薬庫の番兵が仕出し弁当屋の酒を楽しみにしていたこと、養蚕事業が試行錯誤の末に失敗に終わったことなどを生き生きと描いている。 夜学に通う屯田兵が校長を襲撃しようとした事件が起きて「琴似兵村は面倒な処」との評判が立ち、以後はこの学校に「名校長」が送り込まれた結果、卒業生には教育者が多くなったとの逸話も紹介。読者からは「具体的なエピソードが盛り込まれており、興味をもった」と好評だという。 梶田さんは「開拓の精神がにじんでいる本。多くの人に読んでほしい」と話した。復刻版は約280ページで1800円。既に300部印刷し増刷も検討している。購入希望者はメール(post@tonden.org)へ。