【コタツ記事がまん延する日本】これでは経済政策の議論が深まらない。GDPを増やすために政府がすべき「ある事」とは?
経済政策論議には、物価が上がればなんとか下げろ、円安になれば輸入物価が上がるからなんとか上げろ、国民は好景気を感じられない、富の分配が不公平になっている、というようにばらばらな政策目標の達成を求める議論が多い。政府もそれに呼応して、石油元売会社に補助金(燃料油価格激変緩和補助金)をばらまいてガソリン・軽油価格をある程度抑え込んだ。ここで日頃ばらまきはいけないという財政学者の発言は聞かれない。 また、政府は、円安に対しても介入するぞと発言している。市場に任すべき金利を押さえつける日銀はけしからんという一部金融学者も円安に介入して円高にすることには発言がない。 取材しないで書く記事をコタツ記事、コタツにいて書ける記事というそうだが、経済理論にもデータにも依拠しないコタツ経済評論が多いのではないか。
経済政策を個別に考えては矛盾する
コタツ経済評論が蔓延するのは、最終的に経済政策の目標を明示せず、その場その場で反応しているだけだからだろう。筆者は経済政策においては、最終的には国民一人ひとりが豊かになり、環境も悪化させず、所得分配もそう悪くならない、特に、現在不利な状況に置かれた人々がさらに不利になることがないということが大事だろうと思う。 そう考えると、石油価格が上がらないように補助金を出すというのは二酸化炭素(CO2)排出を抑え、地球環境を悪化させないという要請と矛盾している。しかも、その補助金は2022年1月から23年9月までで6.2兆円にもなるという。
その後も支給され続けているので、最終的に10兆円を超えるのではないか。10兆円なら、1.27億人の国民一人当たりでは7.3万円になる。国民に直接現金を配った方がCO2排出量は増えないだろう。 さらに本欄「ガソリン補助金は問題大ありの政策である経済的理由」で指摘したように、この補助金はガソリン価格の低下とともに石油元売各社の利益増加にもなっている可能性がある。会計検査院も、ガソリン補助金の「支給に相当する額が小売価格に反映されていない可能性がある」とする調査結果を23年11月7日公表している(「ガソリン補助金、小売価格の抑制効果に疑問 検査院調査」日本経済新聞23年11月7日)。 円安は確かに輸入物価を上げるが、円高になればうまくいくという訳でもない。08年リーマンショック後の1ドル79円にもなった円高は、日本経済に壊滅的打撃を与えた。少しの円高、150円が145円になるぐらいなら大したことにはならないという方もいるだろうが、少しなら物価を下げる効果も少しである。