〈トランプにとって関税は政治・外交の万能なるこん棒〉すでに始まる攻勢にどう立ち向かうべきか
トランプとメキシコのシェインバウム大統領の電話会談
この社説は、トランプが就任初日にカナダとメキシコの輸入品に対して25%、中国からの輸入に10%の関税を課すとSNSで宣言したことを厳しく批判したものである。 カナダとメキシコは、これに反発している。 メキシコのシェインバウム大統領は、トランプと電話会談をして、薬物と移民の米国への流入を抑えるようにメキシコ側の措置を強化すると述べたようであるが、トランプが高関税賦課を取り下げたとの事実はない。逆に、自分が高関税措置で脅した結果、メキシコが必要な措置を講じることになったとSNSへの投稿で自慢している。
トランプは、関税という言葉は愛という言葉よりも美しいと述べたこともある関税信奉者である。ただ、高関税は相手国からの報復関税を招き、そのやりあいは、結局、保護主義の蔓延、世界貿易の縮小、世界経済の縮小につながるだろう。
日本はグローバリゼーションの逆回転を止めるべき
今回の高関税賦課のニュースは、1930年の米国の関税法、スムート=ホーリー法を思い出させる。29年の米国発の世界恐慌に対応して、フーバー大統領の時代に成立した高関税による保護主義を導入した法案であるが、世界経済の分断、ブロック経済圏の蔓延など、第二次世界大戦を引き起こす遠因にもなった法案である。 トランプ政権の2期目は、色々な変化を生じさせると考えられる。グローバリゼーションで世界が自由な貿易で利益を手に入れてきたが、そのグローバリゼーションの潮流は逆方向の回転に大きく変わっていくのではないかと感じている。日本はグローバリゼーションの逆回転を止めるべく努力するべきと考えるが、米国がグローバリゼーションに背を向ける中、どこまでできるかはよくわからない。 協調と協力の世界が分断と対立の世界に向かう恐れがある中、日本にはそれを遅らせ、できれば元の軌道に戻す努力を同じ考えの国と協調しつつしていく必要があると思われる。
岡崎研究所