かつては旅行いまアプリ 福井の企業が“内定辞退対策”アプリを開発した理由
夏休みに入り、来春卒業を迎える大学生の就職活動が本格化してきました。ことしは企業の選考が昨年より2ヵ月早い6月1日解禁となり、既に企業からの内定、内々定が決まった学生が増えてきています。 昨年に続き“売り手市場”といわれることしの就職戦線。企業の採用担当者が頭を悩ますのはせっかく確保した人材の入社辞退です。そこで、内定辞退を引きとめる新ツールになればと、福井市のウェブ制作会社が内定者フォローサービス用アプリを開発しました。 人口80万人に満たない福井県の企業が“内定辞退防止対策”アプリをつくった背景には何があるのでしょう。
SNSで内定者とつながる 学生が入社までに垣根を低くすること狙い
内定者フォローサービスアプリ「Chaku2 NEXT」(チャクチャクネクスト)」を開発したのは、ウェブ制作会社、サーフボード(福井市開発2丁目)です。電話やメールよりも、SNSに慣れ親しんでいる新卒大学生が利用しやすいよう、企業と内定を出した学生とのコミュニケーションツールとして運用を始めました。 企業から連絡が入れば、スマートフォン画面のアプリにプッシュ通知が付きます。企業側は管理ページで、学生からのログイン回数や時期を把握することができるので、採用担当者がアクセスの少ない学生を早くから手厚くフォローするなどの対策をたてやすくなっています。また、学生側は、社内限定のSNS機能で、先に入社している社員の投稿した画像や入社動機、懇親会のお知らせなどを見ることができ、社内アンケートを受けることもできます。採用担当者以外の先輩社員の様子や会社の雰囲気をいち早く知ることで、入社前から仲間意識を持ってもらうことも狙いとしています。 もともとホームページ制作をメーンとしていた同社。アプリ誕生のきっかけは、担当する企業から聞いた「入社直前に断りがあって、追加募集に困った」「入社式に内定を出した学生が来なかった」という苦労話でした。同社の試算では、企業が5、6人採用した場合、大手の合同説明会の参加費用などを考え、新卒者一人当たりにかかる採用コストは約70万円、入社時期間際の内定辞退は企業にとって大きな痛手です。 アプリ担当の本庄孝司さんは「大手企業が採用を増やす中、地方の中小企業の人材確保は大変な問題だと思いました」と話します。今のところ福井県内や東京都の銀行、IT企業、メディアなど、お試し利用を含めて約10社が使用しています。「バブル期には内定者を旅行に連れて行ったかもしれませんが、今の学生さんにとっては、アプリで先輩社員のキャラクターを知るほうが垣根なく、スムーズに入社できると考えています。今後も稼動している企業のフォローをしながら、カスタマイズ性を高めたい」と抱負を語ります。