ふるさと納税で町が激変?寄付額「関東1位」の小さな町
「10年前の境町は、いつ破綻してもおかしくない自治体だった。1741市町村の中で後ろから29番目の財政の悪さ。ふるさと納税という制度が拡充され、この10年で飛躍的に改善した」。 まさに、ふるさと納税さまさま。寄付金を伸ばすため、町長と二人三脚で返礼品開発に取り組んでいる野口富太郎さんは、数々の人気返礼品を生み出したヒットメーカーだ。
寄付金1万8000円で、地元が誇るブランド豚・梅山豚の脂の乗ったバラブロック(650グラム)、寄付金1万円で「境町の秘伝のたれ」に漬けた「国産うなぎ」(3尾)、寄付金1万2000円で、境町で育てられた常陸牛の霜降りスライス(400グラム)が届く。
一番人気は米で、食べ比べセットにしたところ人気に火が付いた。寄付金1万4000円で、お米4種食べ比べ(20キロ)が届く。 「ふるさと納税に関しては、ブランドがあるものからやっていくべき。知らないものを出しても(人気が)出ない。認知度のあるものは(人気が)出る。おいしければリピートにつながるので、まず市場を取る」。 野口さんの本業は、地元で約150年続く日本茶の専門店「野口徳太郎商店」の5代目。 この辺りは、「さしま茶」という銘茶の産地で、濃厚な味と香りが特徴。自慢のお茶は、ふるさと納税の返礼品にもリストアップされている。
「事業は地元と密接につながってくる。自分たちばかりが儲かってもダメ。(地域)全体が盛り上がっていかないと、いずれはしぼむ」。 町全体が盛り上がって行かなければ、未来はない…そう感じていた野口さんは、2016年、橋本町長の強い誘いで、ふるさと納税を取り仕切る「さかいまちづくり公社」の社長に就任。返礼品の開発を任されるようになった。 そんな野口さんが、今、特に力を入れている商品とは――。開発の舞台裏に迫る。
ふるさと納税から除外された町…住民サービス維持へリベンジ!
宮崎県都農町。日向灘を見渡す丘の上にある「都農ワイナリー」は、九州では珍しいワイン工房だ。都農町はもともとブドウの栽培が盛んで、30年ほど前、ワインに転用。国内だけでなく、イギリスのワイン専門誌で“最もエキサイティングなワイン100選”に選ばれたこともある。 しかし去年1月、その町に衝撃が走った。2年間にわたり、ふるさと納税の対象から外されてしまったのだ。人気の宮崎牛の注文が一事業者に集中して返礼品を提供できなくなり、町が高い肉を買い集めてこれを補った結果、“返礼品は寄付金の3割まで”というルールを大きく逸脱。当時町長だった河野正和さんは、「集まる寄付の額に対して、我々の体制が十分ではなかった。100億円も来ると、目の前の業務に追われる」と振り返る。