ツアーファイナルで錦織が“死のグループ”を勝ち抜く条件とは?
このように、錦織を待ち受けるのが厳しい相手ばかりなのは、疑いの余地がない。ただ、その現実を憂いているのは何も錦織の周囲だけではなく、特に今大会に年間1位が掛かる、マリーを取り囲む雑音は大きい。英国の大手メディア『テレグラフ』は「マリーに衝撃的なグループ編成が告げられた」と報じ、マリーが全米オープン準々決勝で錦織に敗れたことにも触れている。 さらに英国メディアが危惧するのは、彼らの英雄が、母国開催のこのツアーファイナルズを得意としていない事実だ。これまでツアーファイナルズに7回出場しているマリーだが、ロンドン開催となった2009年以降の6大会では、グループ戦を突破したのは2回。通算戦績でも8勝10敗と負け越している。 マリーがこの大会をやや苦手とするのは、O2アリーナ内に作られたコートとの相性が大きい。巨大アリーナ内に設えた特設テニス会場は、暗闇の中にコートのみが浮かび上がる、幻想的な演出が施される。ただその非日常的な空間が、どうも神経質なマリーには合わないようだ。特に影響を受けるのがサーブで、2年前には「相手との距離感がつかみにくい」とこぼしていた。 また、「コートの構造のためか、サーブを打った際の反響音が心地よく響かない」ことも、「サーブでリズムを作り難い」要因だと彼は言う。彼が奇異に感じる音の響きは、O2アリーナが日頃はコンサート会場として使われることに起因しているのかもしれない。 では、マリーがそのように繊細な変化に苦しむ中で、錦織はどうだったかというと……「僕、にぶいみたいで、そういうことには全く気がつかなくて」と、いかにも彼らしい言い回しで頼もしさを表出していた。なお両者は2年前の同大会で対戦し、その時は錦織が快勝している。 もっとも、そのマリーとの対戦よりも先に錦織が迎える山場が、日本時間14日にある初戦のワウリンカ戦である。両者の対戦成績は錦織の2勝4敗。今シーズンに限れば、1勝1敗と星を分け合っている。