「世界記録保持者もこんなに苦労するんだ…」女子ハードル田中佑美(25歳)がパリで感じた“世界との距離”「決勝はもう一段階、上の実力がないと」
パリ五輪陸上女子100mハードルに出場した富士通の田中佑美(25歳)。40人中39番目の出場ながら敗者復活戦を勝ち上がり、準決勝進出を果たした。予選、敗者復活戦、準決勝と3本のレースを走る中で「決勝はもう一段階実力がないと残れない世界線」とトップとの差を痛感した。その一方、昨年のブダペスト世界選手権とは異なり「参加できた」と思えた理由とは――。《全3回の3回目/最初から読む》 【写真】「えっ、何頭身なの…?」172cmの“モデルハードラー”田中佑美(25歳)女性誌でも披露の長~い手足とバキバキの腹筋。試合での迫力のハードル飛越に、爽やかな私服インタビュー特撮も…この記事の写真を見る 敗者復活戦を経て進出した準決勝、田中は12秒91で組7着。自身で想像していた通り、決勝の壁は分厚かった。 そのパリ五輪から3カ月が経ち、田中は淡々と振り返る。 「予選、敗者復活戦、準決勝と3本のレースを走る中で、自分の実力では決勝には至らないことをより一層強く感じていました。今回は敗者復活戦で救われましたが、自分のパフォーマンスをしっかり発揮しても、準決勝にギリギリ残れるかどうかのレベル。決勝は、もう一、二段階上の実力がないと残れない世界線ですね」
世界記録保持者も準決落ち…決勝への「高い壁」
あるトップ選手の意外な様子を目の当たりにし、なおさら決勝に進む難しさを感じたという。 準決勝で同じ組に入った、現世界記録保持者のトビ・アムサン(ナイジェリア)。アムサンは2022年のオレゴン世界選手権で12秒12の世界記録を樹立。決勝では追い風参考ながら12秒06という大記録を出し、金メダルを獲得している。今回も優勝候補に挙げられていたが、組3着で決勝に進むことすらできなかった。 「ウォーミングアップの時間帯が一緒だったのですが、スタートから一台目までのアプローチが噛み合っていなかったようでした。コール場所に入ってきたときは陽気に喋っていたのですが、テントの陰に座った瞬間にシュンとしていて。世界記録保持者でも、心身の状態が合わないとこんなに苦労するのだと。そこにはもうワンランク上の大きな戦いがあるのだと感じました」 現状の実力では、その戦いに名乗りを上げることはできない。 世界記録保持者の小さな背中を見て、ひしひしとレベルの差を感じたという。 ――世界との差をどう感じているのか? パリを終えてこうした質問を受ける機会が増えたというが、田中は自分なりの尺度を持ち合わせている。 「世界との差ってよく言いますが、それって速い選手とそうでない選手との差であって、世界と日本の差ではないなと思ったんです。なので、世界の壁にチャレンジというよりは、一つ上、二つ上の選手との差を埋めるために頑張っていこうというモチベーションのほうがしっくりきます」 速い選手との差――田中が一つの「指標」としているのは、準決勝で隣を走ったピア・スクジショフスカ(ポーランド)。決勝進出はならなかったが、組3着で12秒55をマーク。世界室内女子60mハードルでは銅メダルを獲得している。 「最初の数台は彼女のことがしっかり見える位置につけていたんです。ここについていけば少なくともベストが出るという気持ちで必死にすがりついていたのですが……」
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