田中瞳アナウンサー、“ギャップ”に戸惑い悩んだ新人時代 『WBS』を通して意識に変化
◆新人時代はギャップに戸惑いや悩みも 『WBS』を通して意識に変化
本書の中でさまぁ~ず、狩野アナ、白岩さんそれぞれから「自分のことを話さない」との田中評が寄せられていた。「昔からずっと私、人の話ばかり聞いていて、自分の話をしないんですよ。どういう人なのか、ミステリアスとか、何考えているか分からないという印象ばっかり持たれます」と、そこは自分でも認めるところだという。「自分がどうだって言いたいわけじゃなくって。自分にあんまり興味がないのかな…」。 田中自身、学生時代にキャスター経験はあるが、そもそもどうしてもアナウンサーになりたいと前のめりな姿勢ではなかった。入社当初は戸惑いもあったという。「学生の時に初めて見たアナウンサーの仕事というのが、裏側というか、表に出ている顔じゃなくて準備中の姿を見たのが初めてでした。なので、キラキラした派手なイメージがあまりない中でアナウンサーを目指して。実際になってみたら、やっぱりそういうキラキラした派手な職業だって世間から思われるんだなっていうのが、最初のギャップでした。キラキラした仕事に就きたいと思ったんじゃなくて、そうじゃないって思ってアナウンサーになったんですよ。だから不思議な感じでしたね。泥臭い仕事だというのは想像通りでしたが」。また、「意識しなくていいと思いながらも、でもやっぱり比べられる対象がいると、どうしても自分でも気にしちゃいますよね。1年目はけっこう悩みました」と新人時代を振り返る。 悩みながらも続けたアナウンサー生活は6年目を迎えた。この6年で生まれた変化を聞くと「こだわりの詰まったVTRを作ったり原稿を書いたりするディレクターがいて、それを最終的に伝えるというのがアナウンサーの役割なんです。そこに対して、全部受け身でいるのではなくて、自分でこだわりを持って提案したり、こうしたらより伝わりやすいんじゃないかと、作り手側に少し入り込むじゃないですけど、そういう意識を少し持てるようになったことですかね」と明かす。 そうした意識の変化は『WBS』での経験を通して生まれたという。「今『WBS』で報道のフィールドキャスターという役割でいろんな現場に行くんですけど、せっかく田中が行くんだから、田中が行く意味というのを考えなくちゃいけないと教えてもらったんですよね。そう言われてから、これやれ、あれやれ、ここ行けと言われた通りにするだけじゃなくて、自分がこう考えたからこういうリポートにしたとか、そういう自分が行った意味をちゃんと持たせるようにしようという意識が生まれたことは大きいと思います」と明かす。 今の田中瞳をそのまま映し出した本作についての思いを聞くと、「もちろん本を世に出すために書いたり撮影したりしたんですけど、いよいよ世の中に並ぶのかと思うと不安で(苦笑)。こんないろいろ書いていいのかな、大丈夫かなとも思いますけど、嘘はつきたくないので、ありのままを綴りました」ときっぱり。「アナウンサーなので、私の中身を別に知る必要はないというふうに思われる方もいるかもしれないんですけど、アナウンサーとしてというよりも、1人の人間として、28年間の短い人生をギュッと詰め込んだ本になっているので、ここに書いていることだけを信じてほしいなって思います」。(取材&文:渡那拳 写真:松林満美) フォト&エッセイ『瞳のまにまに』は、講談社より11月20日発売。定価1980円(税込)。