人気のコンサル業界、地頭力を試す面接「東京の通勤ラッシュを解消する打ち手を提案してください」どう答える?
今、就活市場で人気が高いコンサル業界には「ケース面接」と呼ばれる独特の入社試験がある。志望者の問題解決力や地頭力を測る試験だ。新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』は、大手コンサルティングファームの入社試験に対して、現役コンサルタントや内定者の解答を集約した1冊だ。本稿では「選考を突破するためのケース面接の答え方」について、本書から一部を抜粋・編集して紹介する。 【この記事の画像を見る】 ● 「問題解決の思考力」を測る入社試験 ケース面接はコンサルティングファームの入社試験で必ず出題されるタイプの面接で、「問題解決の思考力」を測るためのものです。 面接官からは、企業や政府・自治体が抱える問題を提示され、あなたはこの問題を解決する打ち手を検討していきます。 では、次のケース面接問題に挑戦してみましょう。 ● コンサルの入社試験に挑戦! 面接官: 東京における通勤ラッシュを解消する打ち手を提案してください。 ● 回答のヒント ・打ち手を提案するクライアントは誰か、具体的に想像しましょう(例:東京都、鉄道会社など)。 ・通勤ラッシュの発生原因を考え、解決する打ち手を洗い出してみましょう。 ・洗い出した打ち手について、実効性(インパクト)や実現可能性といった観点から絞り込んでみましょう。
回答のポイント:通勤ラッシュの発生原因を深掘りする 通勤ラッシュが発生する原因を深掘りし、想定するクライアントが実行可能な解決策を提案しましょう。 以下が解答例です。 ※ケ―ス面接の答えは1つに定まるものではありません。提案内容が皆さんの考えと大きく異なる場合もあると思いますが、その際は思考の深さや提案内容の具体性を見比べて自己評価してみてください。 ● クライアントを設定し、通勤ラッシュの発生原因を考える 私は、今回のクライアントを東京都と想定し、電車通勤によるラッシュ時の混雑をいかに解決するかを考えたいと思います。 東京都が通勤ラッシュを問題視する理由には、遅延による「勤労者の生産性低下」といった行政的観点に加えて、乗客者間のトラブルによる「乗客者の満足度低下」といった都営交通業者の観点も考えられますが、今回は行政の立場で検討することとします。 現状のままでは、通勤時間帯では、交通機関が提供できる供給キャパシティ(輸送可能人数)を移動需要(利用者数)が大きく上回ってしまい、深刻な通勤ラッシュが発生しています。 ● 発生原因を踏まえて、通勤ラッシュの解決策を洗い出す 先述の通り、通勤ラッシュは供給キャパシティを大幅に上回る人々が利用することで発生します。 したがって、通勤ラッシュを解決する大きな方向性としては「キャパシティを増やすこと(供給拡大)」と「利用者数を減らすこと(需要縮小)」の2つが考えられます。 まず、キャパシティを増やす方法として、 (1)通勤ラッシュの時間帯における運行本数を増やすこと (2)車両数を増やすこと (3)1車両あたりの収容人数を増やすこと が考えられます。次に通勤ラッシュ時間帯における利用者数を減らす方法として、 (4)移動需要全体を減少させること (5)利用時間帯を分散させること (6)移動需要を電車以外の交通手段に分散させること が考えられます。 (4)移動需要全体を減らす方法としては、在宅で仕事や学習ができる方法を整備することが考えられます。 (5)利用時間帯を分散させる方法としては、企業ごとに通勤時間をずらすことや、ラッシュ時以外の乗車にインセンティブをつけることが考えられます。 (6)移動需要を分散させる方法としては、バスやタクシーなどの他の交通手段の利便性を向上し、活用を促すことが考えられます。 ● クライアントができることを考え、優先度の高い打ち手に絞る では、打ち手の方向性を踏まえて、クライアントである東京都に何ができるのかを検討します。 供給拡大に関する打ち手については、主に鉄道事業者への金銭的な支援が考えられるでしょう。 需要縮小の観点に立つと、テレワークや時差通勤の導入に対しては業界団体や企業各社への呼びかけが主な打ち手となりそうです。 電車以外の交通手段の利便性向上に対しては交通機関への働きかけや公共投資が主な打ち手としてあげられるでしょう。 そこで個々の打ち手について、次のように実効性と実現可能性の2つの視点から優先度の高いものは何かを評価しました。 結果、私は、(A)鉄道事業者による車両改修を支援して車両あたりの収容人数を増やす打ち手と、(B)公共投資などで他の交通手段の利便性を向上し、移動需要を分散させる打ち手が有効であると考えました。 具体的に、(A)については、車両の椅子を撤去し、立って乗車する人を増やす方法や、座席前のスペースに立ち位置を示すサインを表示し、混雑するドア前の乗客をなるべく車両の内側に誘導する方法が考えられます。 また、東海道線などの長距離路線については、ラッシュ時のみグリーン車を減らして普通車を増やすことや、ボックス席の撤去も有効だと考えます。 (B)については、現状、バスやタクシーが鉄道の代替手段になっていないことに注意して考えると、時刻通りに運行する安価なトラム(路面電車)のようなものが効果的なのではないかと考えます。 ラッシュ時以外のトラムの利用が見込めない場合は、現行のバスを活用することとし、ラッシュ時のみ道路をバス優先にするなどの手段で、バスの遅延を減らす方法も考えられます。 2つの施策を行うことで、通勤ラッシュは解決すると考えます。 以上となります。ありがとうございました。 ● 面接官からの質問 ――通勤ラッシュの発生原因として、抜け漏れはなさそうですか? 先ほどは定常的に供給量が不足していたり、需要量が大きすぎたりすることを原因としました。 一方で、突発的な問題によって発生する通勤ラッシュを考えると、かけこみ乗車などの利用者マナーに起因する電車遅延や人身事故があると思います。 ――今回は東京都をクライアントと想定しましたが、仮に鉄道会社に対して提案する場合には、どのような打ち手が望ましいと考えますか? 車両あたりの収容人数を増やすような取り組みは、鉄道会社としても実施しやすいと思います。 その他、乗客にインセンティブを設けて時差出勤を促すことにも取り組めるのではないでしょうか。 たとえば、混雑が予想される時間帯と早朝などのラッシュ時を避けた時間帯の乗車賃に違いを設けることで、乗客の利用時間帯を分散し、通勤ラッシュ時の対応に追われていた従業員の負担を軽減することができそうです。 ――「乗客者の満足度低下」という問題は、通勤ラッシュを解決する以外の方法で、改善可能だと思いますか? 可能だと思います。ラッシュ自体の解消以外に、現状のラッシュ時に発生する乗客者の不便や不快といったマイナスを軽減する打ち手も有効だと考えます。 たとえば、混雑率が高く、遅延や車内トラブルが頻繁に発生している駅を特定し、鉄道各社の人員に加えて東京都からスタッフや支援ロボットを送り、より丁寧な乗客者のサポートをできるとよいのではないでしょうか。 (本稿は『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』から一部を抜粋・編集したものです)
コンサルティングファーム研究会 フェルミ推定・ケース面接対策チーム