わずか16羽から奇跡の復活、毎年8000キロ近くも北米を往復するアメリカシロヅル
北米に生息する中で最も背が高い鳥、羽を広げた幅も2メートル超え
アメリカシロヅルは20世紀半ばにほぼ絶滅状態になり、1941年に確認された個体数はわずか16羽だった。しかし、飼育下での繁殖計画により、個体数は回復した。その後、野生に戻す試みが成功して、野生のアメリカシロヅルの数は200羽を超え、飼育個体数とほぼ同数となった。 ギャラリー:優雅で美しいアメリカシロヅル アメリカシロヅルを管理する大規模な活動は、アメリカとカナダの政府機関、非営利団体、ボランティアなどの多くの協力者によって行われている。超軽量飛行機で彼らの渡りを安全に誘導する活動などが行われている。 アメリカシロヅルは、北米に生息する鳥の中で最も背丈が大きい鳥だ。家族単位の群れで生活し、湿地や浅い湖、潟によく姿を現す。クチバシで植物や貝類、昆虫、魚、カエルなどを捕り、丸飲みにする。 アメリカシロヅルの主な繁殖地はカナダのノースウエスト・テリトリーズ州とアルバータ州にあるウッド・バッファロー国立公園である。夏の間、ここで彼らは生涯を共に過ごす伴侶を決めるために、走り、跳躍、羽ばたきを複雑に組み合わせたダンスを披露する。夏が終わると、テキサスのアランサス国立野生生物保護区で越冬するため、テキサス州の湾岸に向けて飛び立つ。 繁殖プログラムでは、フロリダで越冬する個体をウィスコンシン州でも繁殖させる試みが進められている。また、少数の移入種(外来種)が年間を通してフロリダのキシミー草原に生息している。 狩猟の対象となったり、卵が捕獲されたりすることはほとんどないため、こうした理由でアメリカシロヅルの個体数が激減することはない。しかし、湿地の減少が続いていることが、彼らの個体数を維持する上での最大の問題となっている。アメリカシロヅルがよく訪れる地域は保護されているが、そういった場所は限られているため、生態系の変化が起これば、個体数の減少は避けられない。
ナショナル ジオグラフィック 日本版編集部