自民党本部に掲げられた、歴代総裁”総出演”の総裁選のポスター（写真：共同通信社）

　自民党の総裁選がいよいよ大詰めを迎えてきた。9人もの候補で争われる今回の総裁選は決選投票にまでもつれるのは必至とされるが、決選の場に残れる2人が誰になるのかはまだ見えてきていない。現在の情勢を元産経新聞記者で現在は永田町でロビイストとして活躍する山本雄史氏と、世論調査や選挙予測も手掛けるJX通信社代表の米重克洋氏が分析した。（JBpress） 【写真】議員票では優勢だが党員票では失速していると報じられている小泉進次郎氏。決選投票に進むことはできるか ■　石破、高市、小泉の三つ巴 　山本雄史氏（以下、山本）　今回の総裁選は異例ずくめです。まず候補者が9人も出るというのが従来なら考えられなかった。自民党には結党時、「八個師団」という言葉がありました。つまり党内には8つの派閥があるという意味です。それが今回は候補者が師団の数を超えたわけで、戦後政治史の中で眺めても画期的な総裁選です。 　米重克洋氏（以下、米重）　もちろん岸田文雄首相が示した派閥解散の方針の影響ですが、今回の候補者とその推薦人によって新しい派閥が出来上がっているという見方もありますね。 　山本　“派閥”という言葉が適当かどうかは別にしてグループが形成される可能性はあります。野党も含め党首選では、その候補と支援する議員の結束力が極めて強固になります。特に推薦人は候補者の連帯保証人みたいなもので、その関係性は密接です。それが9候補に20人ずついるわけですからね。 　米重　総裁選の行方を考えるうえでもこの9×20=180の議員票はもうそれぞれの候補にいくことが確定と見ていい。つまり議員票の半分はすでに振り分け先が決まっている。だから今回の総裁選は必然的に党員票の比重が高くなります。そして現時点の世論調査を見ると、党員票は石破茂さん、高市早苗さん、小泉進次郎さんの3人に集中していますね。 　山本　この三つ巴の構図が変わることはまずないでしょうね。

　米重　3人の争いの構図は8月初旬の世論調査でだいたい見えていましたが、当時は小泉さんが優勢という結果でした。それが今は、高市さんの支持が伸び、小泉さんが伸び悩んでいる印象です。 　山本　ただ小泉さんの陣営の顔触れは豪華ですよね。推薦人に小林史明元デジタル副大臣がいるし、村井英樹官房副長官も出陣式に出てきている。言うなれば、岸田首相の側近ツートップがいる。 　米重　経産相の斎藤健さんや幹事長代理の木原誠二さんも小泉さん支持だと報道されていますね。 　山本　岸田官邸の一部がそのまま小泉陣営に引き継がれているような印象です。自民党は生き残るためなら何でもありなので、岸田官邸の面々が岸田さんから小泉さんにトップの顔を変えて刷新感を出そうとしている、ということなのか……。 　米重　刷新感という点では、世論調査を見ても石破さんがそのイメージを一番強くまとっている。長く“与党内野党”のポジションにいたことがここにきて奏功し、「自民党にお灸を据えてやらないと」と思っている党員にとって石破さんは格好の投票対象になっています。 ■　石破氏の強さの理由 　山本　石破さんの強さの理由をどう分析していますか。 　米重　ひとつは、コアな自民党員にちゃんと刺さっていること。ずっと総裁選に出続けてきて知名度も抜群だし、熱心に地方巡りをしてきたことなどが評価されている。もうひとつはコアではない党員にもウケがいいことです。党員の中でも、かなり無党派層的な政治意識を持つ人にとっても「自民党の議員だけど与党内野党だからわれわれに近い」と映っている。コアと周縁部の両方を押さえているところが強い。