三笘薫と「刺し違い」 サウジの狙いを攻略した“森保采配”、鍵を握った「サイドの攻防」【コラム】
森保監督は試合前「サイドの攻防はめちゃくちゃ楽しみにしていただければ」と発言
10月の2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選のサウジアラビア戦とオーストラリア戦に臨む日本代表発表記者会見で、森保一監督は会見を終えて席を立つと、もう一度メディアの方を向いて一言残した。 【動画】日本代表が仕掛けた「史上最高のオフサイドトラップ」の決定的瞬間 「サイドの攻防はめちゃくちゃ楽しみにしていただければ」 これがサウジアラビア戦のサイドの攻防を意味していたのは間違いない。会見の質問の中でサウジアラビアの強力なサイド攻撃にどう対抗するのかという質問が出て、森保監督は答えをはぐらかしていたのだ。だが、人のいい森保監督はそのまま会見を終わるのがイヤで、最後に一言付け加えたのだろう。 それまでの日本代表関係者の話をいくつかつなぎ合わせると、この時点で森保監督は、サウジアラビアの右サイド、サウード・アブドゥルハミド(ASローマ)を三笘薫にぶつけてくると想定していたようだ。 今年年頭にカタールで開催されたアジアカップでは、サウジアラビアの両サイドが攻撃のリズムを作っていたが、特にこのアブドゥルハミドが攻撃をリードしていた。そしてアブドゥルハミドを三笘にぶつけることで、日本の攻撃力を削ごうとするだろうと考えていたのだ。 もっとも、サウジアラビアはここまでほぼ3-4-3のシステムでスタートしていた。そのため3-4-3のミラーゲームになることを森保監督は考えていたはずだ。そこにサウジアラビアはアブドゥルハミドを右サイドバックにする4バックでスタートしてきた。森保監督は相手が4バックにする想定もしていたのだろうが、試合開始早々、サウジアラビアのシステムを確認して指で「4」と選手に伝えていたのはスタートからそう来るとは思っていなかったからかもしれない。 三笘をマークするのが右サイドバック(SB)なら相手をより押し込めるはずだ。ダブルマークで対抗しようとしても、そのぶん前線や中盤の選手が降りてこなければならず、そうなるとサウジアラビアは右サイドの推進力を失ってしまう。 だがその「三笘のサイドは刺し違い」という考え方にサウジアラビアは振り切ってきた。実際のところ、このサウジアラビア戦では三笘らしいドリブル突破はほぼ見ることができなかった。一方で、アブドゥルハミドが右サイドを蹂躙することもなかったのだ。 それでも三笘が先制点の場面でサイドチェンジをダイレクトで折り返したことがゴールにつながった。またアブドゥルハミドが前半42分、ペナルティーエリア付近で打ったシュートがこの試合でサウジアラビアの得点に最も近かった。それだけ2人のレベルは高かったと言えるだろう。