“実家暮らしの長男”が負担してきた〈母の生活費〉…「長男が支払うのが当然」と主張する弟たちに請求できるのか?【弁護士が解説】
三人兄弟の長男で、亡くなった母の生活費の大半を支払ってきた相談者。母の死後、支払ってきた生活費の支払いを弟たちに求めるも、「母と同居していた長男が払うのは当然」と、支払いを拒否されてしまったといいます。本稿では、弁護士相川泰男氏らによる著書『相続トラブルにみる 遺産分割後にもめないポイント-予防・回避・対応の実務-』(新日本法規出版株式会社)より一部を抜粋し、被相続人の生活費を負担した相続人の回収方法について解説します。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング
被相続人の生活費を負担した相続人の回収方法
私は、三人兄弟の長男で、母と実家で同居していました。母は実家を所有していましたが、預金がなく年金も少ないので、母の生活費の大半は、全て私が払っていました。 母が亡くなったので、これまで私が払ってきた生活費を弟たちに請求したいのですが、弟たちは、長男で母と同居していた私が全部負担するのが当然だと主張し、応じてくれません。 紛争の予防・回避と解決の道筋 ◆遺産分割手続の中で、相続人の一人が負担した被相続人の生活費を考慮するためには、当該相続人に法定相続割合以上の遺産を取得させる必要があるが、合意が得られない可能性がある。その場合、寄与分の主張を検討する ◆相続人の一人が、他の相続人(扶養義務者)に対して、自らが負担した被相続人の生活費の求償を求めることもできるが、合意が得られない可能性がある。その場合は、扶養請求調停・審判の申立てを検討する ◆他の相続人(扶養義務者)に資力がない場合には、過去の生活費を求償できない結果になるので、被相続人の生前から、生活費の回収方法を検討、準備しておく チェックポイント 1. 特別な寄与の事実(被相続人と生活費を負担した相続人の収入・資力、支払日、金額、頻度等)を証明できる証拠の有無を確認する 2. 過去の被相続人の生活費(扶養料)の負担の事実(被相続人と生活費を負担した相続人の収入・資力、支払日、金額、頻度等)のみならず、他の相続人(扶養義務者)の資力(余力)を証明できる証拠の有無を確認する 3. 被相続人の生前のうちに、生命保険や遺言を活用し、事実上、過去の生活費を補填できるようにする