けが人を背負って運ぶ様子を参加者で再現する倉本さん

　御嶽信仰の信者を登山案内し、荷物を運ぶ「強力（ごうりき）」を中心に御嶽山の文化を学ぶ講演会がこのほど、長野県木曽郡木曽町福島のコワーキングスペース・ふらっと木曽であった。50年近く強力の仕事に携わる倉本豊さん（68）＝木曽町日義＝らが経験や思いを伝え、参加者は「お山」に理解を深めた。 　倉本さんは、背負子（しょいこ）にくくりつけて運ぶ荷物は重いと80キロにもなると説明した。けがをした登山者や信者を背負うこともあり、山頂からけが人を降ろしたときは1回で体重が4～5キロ減ったという。荷造りやけが人の運び方も実演し、約80キロの参加者を背負うと会場から驚きの声が上がった。 　山小屋の荷物を運ぶ仕事は「持子（もちこ）」と呼び名が変わる。「強力は頼られる存在。持子より非常に大きな責任を伴う」と話した。近年は新型コロナウイルス禍などで団体登山者が減り、複数の強力が一緒に仕事をする機会が少ない。若手の指導も難しい中だが「できる形で経験を伝え、継承していきたい」と語った。 　講演会は強力と持子の4人が話し、御嶽山の山小屋の暮らしや動植物についても伝えた。強力の塚原慎二さん（30）＝木曽町開田高原西野＝が、先代の仕事を引き継いだ機会に多くの人に強力などを知ってもらいたいと企画した。