迎え酒大歓迎!知る人ぞ知る二日酔い解消カクテル/むぎが氏とワンルーム酒場(2)私の休肝日は今週もリスケになりました。
飲むと言ったらわが家一択……!カクテルコンペティションにて特別賞を受賞し、バーテンダーの経験もあるYouTuberむぎが氏。YouTubeでは連日、晩酌の様子を配信し、「朴訥(ぼくとつ)とした語り口に癒やされる」「手際のいい調理は見ていて気持ちいい」「画面からお酒の味が伝わってくる」など話題沸騰中。お酒を愛し、お酒に愛されたといっても過言ではない彼女による、ワンルームで楽しむ晩酌エッセイ連載。連載第2回は、休肝日の様子をお届け! 【写真】晩酌で楽しんだブラッディ・シーザー 本人提供写真 ■私の休肝日は今週もリスケになりました。 回転寿司の甘エビを水槽に入れて育てる夢を見た。現実だったらきっと水槽の底に沈んでくのだが、夢の中では甘エビが生き生きと元気に水槽の中を走り回ってた。 お酒をたくさん飲んだ次の日は、変な夢を見たり目が覚めるのも早い。 スマホの時計を見ないで心の中で何時か当てる。これは毎日やっている儀式だ。深酒した次の日は意外と早く目が覚めることが多く、5:13と心の中で決める。スマホの時計を覗くと予想に反して、4:32だった。この誤差が多ければ大きいほど、体調が悪いと判断をしてまさにその通りで、昨日のお酒が抜けずに頭も痛く喉もカラッカラだ。 ふらふらする体を起こし、キッチンへ向かい冷蔵庫を開け、2リットルの水を勢いよく胃袋へ送る。枯渇していた体に、潤いが与えられ心の底から生きてる実感がする。二日酔いに飲む水こそ、美味しいものはない。 ウイスキーの語源はゲール語で「ウシュクベーハー」(生命の水)を意味するが、本物の生命の水とは、二日酔いで喉がカラッカラになった時に飲む水のことなのではと毎回思う。二日酔いではミネラルが不足してるとのことで、ミネラル豊富な塩をペロリと舐め、これだけじゃ二日酔いが治るか不安なので、純系ウコンの錠剤もぐびっと飲んで二日酔い対策としてやるべきことはやった。 今日は土曜日だし、ベッドに戻り気が済むまで眠ることにしよう。 エアコンが効いた部屋、ふかふかのベッドで時間を気にせず眠れることに安心感と、そして二日酔いの気持ち悪さを感じながら、今日は休肝日にすると心の中で誓う。というか、体調が悪すぎてどうにもお酒を飲む気持ちになれない。この気持ちを持ち続けられれば良いのだが。 水槽に入れられた甘エビの夢の続きは見られず、深い眠りにつき目が覚めた。また時間当てゲームをするが、大幅に外れた。今日は体調がすぐれない。やることもないしまだベッドから起き上がる気にもなれず、とりわけ眠くもないからYouTube見ながらダラダラすることにした。 私は眼精疲労を抱えていて、目医者さんに「スマホを使うのを控えなさい」と言われたが、どうにもこの現代でスマホなしでは生きていけなく、眼精疲労がひどい左目を少し枕で覆いながらYouTubeを見る。徐々にまぶたが落ち始め、意識もシャットダウンして体の力が抜けていくと手からスマホが落ちるとハッと起きる。 眠るか眠らないかの、ぽあぽあした至福の時間だ。ハッと起きた時になんともいえない幸福感を感じる。いつかくる死ぬ瞬間、こんな感じで眠りながら逝きたいなと思いながら目をつぶる。 カーテンから漏れる光に昼の気配を感じ、目を開けた。恒例の時間当てゲームをする。12:15だと心の中で決めるが本当はもっと時間が経ってる気がする。もはや当てるのではなく、この時間であってくれという希望なのだ……。 スマホを見たら13:42だった。少し寝過ぎたと思うが、一応許容範囲の時間。大丈夫、今日はまだまだ始まったばかりだ。 体調は朝よりだいぶ楽になって、二日酔いには寝ることが大事だなと心の底から実感したら、お腹が急激に空いてきた。普段は中々ベッドから起き上がらないが、お腹が空いた時の行動力は何ともまぁすごい。 迷うことなくガバッとベッドから起き、キッチンへ向かう。お腹は空いてるが、二日酔いレベルが30%くらいなので胃の消化に良いさっぱりとしたのを食べたいと思い、二日酔いに効きそうなお昼ご飯を作る。 鍋にお湯を沸かし、常備しているしじみスープを取り出す。しじみスープは二日酔いに効くオルニチンとやらが沢山入っているらしく、本当に効くのか効かないのか分からないが、きっと世の中の酒飲みのお家には常備しているアイテムだ。 お湯が沸騰したら弱火にして、思い切ってしじみスープを2袋入れちゃう! 棚からあさりの水煮缶詰を取り出し、缶詰を開けると潮っぽい海の香りが漂う。しょっぱい系のハイボールが飲みたくなる香りだが、二日酔いだし今日は休肝日だと心に決めたし、我慢!! あさりの水煮をざるにあげ、水気を切り、しじみスープが入った鍋へ入れる。あさりは二日酔いに効くのか分からないが、しじみ然り貝類ってなんか二日酔いに効きそう!貝類たちには頭が上がりません…。冷蔵庫から、今回の主食であるうどんを取り出し鍋に入れる。しじみスープがビシっと味つけしてくれてるから、特に調味料入れずに茹で上がるのを待つ。 いつもだったら待ってる時、片手にお酒を持ってるが、今日はどこか手持ち無沙汰で寂しい。スマホでも持ってぽちぽちしておくか。 3分くらいして、完成。しじみスープwithうどん、二日酔いうどんと名付けよう。しじみスープにあさり缶詰とうどんを入れただけの料理だが胃袋に、二日酔いによさそう。 鍋敷きを敷いて、その上に鍋をそのまま置く。直鍋でいただきます。 直鍋だと洗い物も減るし、器に移す手間も省けるしもうこれは一人暮らしの特権ですね。 麺をあげ、食べていく。麺はツルツルで、すするとスルスルとお口の中に入っていき、中々シンプルで美味しい。うどんは太くて食べ応えがある。とりわけめちゃくちゃ美味しい訳でもないが、優しい味わいで胃袋も満足そうだ。二日酔いB級グルメに出店したい。 スープも飲んでみる。これが胃に染みる……! しじみとあさりの出汁が仲良くフュージョンして、まさに五臓六腑に染み渡る系の味わいだ。少しだけ塩分が欲しかったから、のどぐろだし塩をちょびっと入れる。これもまた、スープが濃厚になり美味しい! 体に温かいものが入り、ホッとする気持ちになるが何か足りない気がした。 少し食べたらあのーーーー……えーっとですね…… ちょっとだけお酒が欲しくなった!!! 幸いにも今日は休みだし、いつも通り昼から一杯引っ掛けたい。とはいえ、昨日たくさん飲んだこともあり、今日は控えめにそして二日酔いに効くカクテルを飲むとしよう。そうですね、これは迎え酒というものですね。お酒を飲む覚悟を決めると、体に締め付けられた休肝日という鎖がパキーーンと外れ、気持ちが軽くなる。 軽い足取りで冷凍庫に向かい、1番底に隠れているキンキンに冷えたウォッカを取り出す。グラスに氷を入れ、ウォッカを遠慮なくいつも通りの30ミリリットル入れる。バースプーンで軽くウォッカと氷をかき混ぜ、クラマトジュースを入れる。最後にブラックペッパーをふりかけ完成(これは入れなくても良い)。お好みでリーペリン(ウスターソースの元祖)や縦長に切ったセロリを加えても良い。 今回はあまり味変をしたくないのでブラックペッパーだけ入れた。 クラマトジュースとは、はまぐりのエキスと複数のスパイスから作られたトマトジュースでしょっぱみがあり不思議なトマトジュースだ。はまぐりのエキスが入っていることから、二日酔いにも効果があると言われてる。やはり、貝類には頭が上がりませんね……。このクラマトジュースとウォッカを使用したお酒が「ブラッディ・シーザー」というカクテルで、知る人ぞ知る二日酔い解消カクテルだ。 ブラッディ・シーザーを口に運ぶ。しょっぱくオイスター系な味わいが口の中に広がり、後からウォッカのアルコールが追いかけてきて体が喜ぶ。どこかトマトスープに近しい不思議なカクテルだ。 しょっぱさがあとを引き、グラスに手を伸ばす回数が増える。 二日酔いうどんもすすり、貝類の優しさを堪能する。二日酔いうどんと、ブラッディ・シーザーの相性は抜群だ。一体感があるというか、生き別れた兄弟が巡り合った感動がここにある。しじみ・あさり・はまぐりの三銃士が、体のアルコールをやっつけてくれる気がする(ウォッカ入れてるからプラマイゼロかも)。 うどんもするするとすすり、少なくなってきたら鍋の下の方にあさりが大量に出てきた。これはつまみに最高だ。 あさりをつまみながらブラッディ・シーザーをちまちま飲んで、あっという間に1杯飲み干した。 クラマトジュースは、221ミリリットルの缶を使用していてブラッディ・シーザー1杯で半分のクラマトジュースを消費する。なので、1缶で2杯のブラッディ・シーザーが作れるのです。 そういうことなので、もう一杯ブラッディ・シーザーを作りましょう。これはもう変えられない運命なのですね。 クラマトジュースの強い味わいもあってか、すんなりと体に入り、いつものハイボールを飲むより、はまぐりのエキスだからとクラマトに対する謎の信頼により罪悪感も薄れ、ごくごく飲んでいく。これはもう今日も始まりましたね、休日の昼飲みが。結局、もうひと缶クラマトジュースをプシュっと開け、ブラッディ・シーザーを作る。 カクテルを作ってる時、「クラマトジュースははまぐりのエキスが入ってヘパリーゼみたいもので、もはや肝臓に良いことしてるのだ」…と都合の良い解釈をして、お酒を飲む言い訳をして自分を納得させる。酒好きは、お酒を飲む言い訳がとても得意なのだ。 二日酔いうどんを平らげ、ブラッディ・シーザーも飲み干すが、クラマトジュースの中身がもう半分余ってるので、不可抗力でブラッディシーザーを作る。カクテルだけじゃちょっと物足りないので冷蔵庫を漁る。迎え酒も相まって二日酔いから完全復活し、むしろ楽しくなってきた。 謎の言い訳と貝類たちの助けにより、私の休肝日は今週もリスケされるのであった。