静かに時を刻む、産業遺産「池島」とは? 軍艦島だけではない離島の異空間
そうしたものが網羅されている同書は迫力ある風景や非日常空間に惹かれる人たちを中心に受けているようだが、写真のほかにもイラストや詳細な解説で、ビジュアルガイドブックとしての機能も果たしている。中には過去池島に住んでいた人から、「写真集が出てうれしい」という喜びの声も届いたとか。一方、「軍艦島とペアで行きたくなった」、「軍艦島の次は池島に行きたい」という人もいるそうだ。トロッコに乗車し元炭鉱マンのガイド付きで坑内を探検するツアーもあるのだとか。
炭鉱とはどんなものだったのか、を想像しやすい「池島」
「軍艦島と池島は、炭鉱で一気に栄え閉山で一気に衰退したという共通点がありますが、最盛期や閉山の時期はだいぶ異なるんです。1974年の閉山後、無人島になった軍艦島は完全に廃墟の島。それから四半世紀後に閉山した池島にも廃墟はありますが、炭鉱アパートも貯炭場もシックナーも完全な形で残っているものが多く、炭鉱がどんなものだったのか想像しやすいという利点があります」 軍艦島や池島は、石炭から石油へという国のエネルギー政策転換の影響が如実にあらわれた島であり、それだけに非常に特殊な光景があちこちに繰り広げられているという。国の体制が大きく変わることによって、放置された建物が増え、それが不思議な空間を生み出す。恐らく、これからも……。 (取材・文:志和浩司)