静かに時を刻む、産業遺産「池島」とは? 軍艦島だけではない離島の異空間
栄枯盛衰のドラマティックさ、ファンタジックにさえ映る時のとまった景観……遺構や廃墟には惹きつけられる何かがある。世界遺産に登録された軍艦島などはその最たる例だろう。 ところが同じ長崎県に、似て非なる、生ける産業遺産ともいえる島がある。池島だ。周囲4kmの小さな離島で、炭鉱設備や炭鉱アパートが残る。1959年から2001年11月29日に閉山するまで約半世紀に渡り高品質の石炭を出炭、日本のエネルギー産業を支えた。最盛期は8000人近い人口だったが、閉山から10年経ったいまも150人ほどが住む。 近年は観光で訪れる人も増えつつあるという。この島の全貌を撮影した『離島の《異空間》 池島全景』(三才ブックス)が今年4月29日に発売されて以来、静かなブームを呼んでいる。そこにはどんな世界が広がっているのか?
軍艦島だけではなかった 工場萌えにもトロッコ、鉄道ファンが喜ぶ要素がいろいろ
『池島全景』は2008年刊行のロングセラー『軍艦島 全景』に携わった黒沢永紀氏が、閉山後の2004年から2017年までの約12年間、池島を取材した集大成という。黒沢氏は、軍艦島に感銘を受けたクリエーターたちが2003年に結成した産業廃墟作品制作集団「オープロジェクト」のメンバー。編集者の関口勇氏は軍艦島の伝道師といわれる黒沢氏自身から、『池島全景』出版の打診を受けたという。 「7年ほど前に雑誌『ワンダーJAPAN』で池島炭鉱の特集を組んだときは大きな反響はなかったのですが、2015年に軍艦島が世界遺産に登録され、産業遺産が脚光を浴びる中で、まだまだ知名度は低いかと思いつつも、本として出して盛り上げていくのもいいかと。発電所跡や貯炭場の重機は工場萌えな方に、炭鉱電車はトロッコファンや鉄道ファンに、また炭鉱アパートのかっこよさは建築ファン、団地好きにアピールすると思います。閉山後も2007年までは海外から研修を受け入れていたため、そのころ許可を取って撮影した貴重な選炭工場などの画像も含まれています」