独自に高校無償化の大阪府、私立志向強まり公立半数が定員割れ…「このままでは統廃合の可能性」
志願者を増やすため、府教委は入試制度の見直しを議論している。
6月20日に開かれた府教委の諮問機関の会合では、公立高の一般入試を2月下旬に前倒しする案が示された。早ければ26年度入試から導入する。私立高の入試(例年2月10日)に近づけることで、入試を早期に終わらせたい受験生の負担を減らし、高校側も生徒の受け入れ準備期間を確保できる効果が期待される。
受験科目を絞ったり、部活動の実績を重視したりと、各校の裁量で試験内容を設定できる「特色入試」の導入なども検討している。
ただし、日程の前倒しには「教育課程を早く終わらせる必要が生じる」(府内の中学校長)などの懸念も出ている。
他の都道府県では、奈良県が今年度、世帯年収910万円未満の生徒に対する授業料無償化(年63万円まで)をスタートさせた。全日制の県立高(27校)では今春、前年より5校多い18校で定員割れとなった。県教委の担当者は「大阪の状況もあり、危機感を持っている。奈良でも新たな入試制度を議論しているが、無償化の影響も踏まえて検討しなければならない」と話す。
広島大の杉原敏彦名誉教授(教育社会学)の話「公立は学費面でアドバンテージがあったが、授業料無償化で特色ある教育や設備が整った私学を選ぶ生徒が増えたのだろう。新たな入試制度の検討と併せて、生徒が何を求めているかを分析し、希望する進路をかなえられる教育を考えることが重要だ」
◆高校授業料無償化=国は2010年度から、公立高の授業料相当額(年間11万8800円)や私立高の授業料を所得に応じて支援している。大阪府では独自に上乗せして私立高の授業料を補助し、24年度から府在住の全生徒を対象に、段階的に所得制限を撤廃。授業料補助の上限額(63万円)を超えた分は、私学側が負担する。文部科学省の23年度の調査では、35都道府県が私立高で独自の上乗せをしている。