「タンタンのこと、忘れないで」神戸市立王子動物園の飼育員さん2人が語った…パンダのタンタンと過ごした「最後の夜」のこと
神戸のお嬢様と呼ばれ、みんなに親しまれた王子動物園のジャイアントパンダ・タンタン。2021年3月から心臓疾患の治療を続けていましたが、2024年3月31日午後11時56分に息を引き取りました。 【写真】パンダのタンタンと過ごした、すばらしい日々 タンタンの生活をサポートするチームタンタンと共に過ごした最後の日々について、記事前編に続き、飼育員の梅元良次さんと吉田憲一さんに伺いました。 【記事前編】「本当にむずかしい子です」そう話すと思わず笑顔がこぼれて…神戸市立王子動物園の飼育員さんが語る、パンダのタンタンと過ごした最後の日々
最後の夜
こうして日々を過ごす中、タンタンのようすに変化が現れたのは3月31日夜のこと。梅元さんと、もう一人の飼育員・吉田憲一さんは、その知らせを自宅で聞きました。その日の帰り際、タンタンに何か声をかけたのか伺うと、「いつも通り、泊まりのメンバーと情報を共有して、ソウソウ(タンタンの中国名)には『じゃあね』と声をかけて帰りました」と、梅元さん。帰り際にいつも行っていた声かけ。体調が落ちてからは極力休ませたいと思い、タンタンが寝ているときには顔だけ見てから帰っていましたが、この日、タンタンは起きていたそうです。 声かけに何か反応はあったのでしょうか。 「このときは回りにたくさん人がいたためか、特に反応はありませんでした」(梅元さん) 治療のためにタンタンの周りにはいつもよりも人が居たそうですが、耳が良いお嬢様のこと、梅元さんの声も聞こえていましたよね、きっと。 こうしていつも通りの1日が終わろうとしていた時、下に敷いたペットシーツを替えてあげた泊まりの飼育員が、タンタンの異変に気づきました。時間は午後10時21分。梅元さん、吉田さん共にもう帰宅した後の出来事でした。
ちゃんと寝かせてあげたい
「もう寝ようと思ってスマホを開いたら、グループLINEに連絡が入っていて。あわてて靴下をはきにいったら、班長から連絡が入りました」。その後はタイミング良く移動ができ、午後11時頃にはパンダ館へ入ることができたという梅元さん。約10分後には吉田さんもタンタンの元へと駆けつけました。 「パンダ館についたときには、獣医師が薬の準備や心肺蘇生処置を行っていました。1分1秒を争う時なので、黙って獣医師の指示に従っていました」(梅元さん) 何かタンタンに声かけをしたのか伺うと「言葉は出ないですよ。それより、逆に冷静にまわりを見ている自分がいました」と、話す梅元さん。容体が急変してからは必要な処置をするために、いつもの寝室から処置室へタンタンを移動させていたのだそう。心臓マッサージや人工呼吸などの蘇生処置が行われましたが、タンタンは反応を示すことはなく、そのまま息を引き取りました。死亡の診断が出てからは「1分1秒でも早く、処置室ではなくちゃんとした所で寝かせてあげたいと思って。最後は寝室へと移動しました」(梅元さん)。