駅伝秘話! 東洋大学から広まった「起死回生の魚コラーゲン」物語
毎年10月に開催される、大学三大駅伝のひとつ出雲駅伝。年始の箱根駅伝に繋がる大会として、駅伝ファンの中では注目度の高いレースだ。2024年、そのラジオ放送の番組にとある静岡県の中小企業の商品名が冠された。従業員40名の水産会社は、なぜ駅伝の冠名を取得するに至ったのか。その裏側には、地方の水産加工会社の生き残りをかけたドラマがあった(前編)。 ●「駅伝×水産会社」の謎 箱根駅伝が目前に迫った12月下旬。静岡県にある日本有数の港町、焼津市のとある企業を訪ねた。 焼津駅から南に向かって車を20分ほど走らせた場所に、その会社はある。ダイトー水産。まぐろやかつおの水産加工事業を手掛ける、従業員40人の中小企業だ。 港で水揚げされたまぐろを原料の状態から、四等分やブロックなどに加工するのが主なビジネスで、商社や水産会社に納品する。手がけた魚は全国の量産店や有名回転寿司チェーンなどに並んでいる。 これだけの説明であれば、そう珍しくはない一般的な水産加工の会社と思われるかもしれない。 しかし、ダイトー水産は2024年、その存在を全国に知られることになった。大学三大駅伝のひとつである出雲駅伝のメインスポンサーを担ったのだ。 ダイトー水産の齋藤啓治郎社長と挨拶を交わした直後、最初の話題も、直前に迫った箱根駅伝についてだった。 「今年は、どこの大学が優勝しますかね。僕としては、やはりお世話になっている東洋大学の酒井監督や選手たちに頑張ってもらいたいですけど。注目度が低い時ほど、東洋は強いですから」(齋藤社長) その通り、ではある。ちょうど一年前、2024年の箱根駅伝も、下馬評を覆して東洋大学は4位でフィニッシュした。 しかし、ダイトー水産は水産加工の会社だ。本社も焼津港のほど近く。この会社と東洋大学の駅伝チームに、どんな関係があるのだろう。 そもそも、なぜ出雲駅伝のメインスポンサーを務めることになったのか? ●在京ラジオから「突然のメール」 きっかけは、一本のメールだった。 「会社のお問い合わせフォームに文化放送の偉い方からメールが届いていたんです。文化放送といえば、三大駅伝すべてをラジオ中継する駅伝界では名門のメディア。とても驚きました。出雲駅伝のスポンサーを探しているとのこと。光栄なことですし、ビジネスチャンスだと思って契約の決断をしました」(齋藤社長) 大学駅伝といえば年始の箱根駅伝のイメージが強いが、実は学生たちが目指す大会は3つある。 10月に開催される出雲駅伝と、11月の全日本大学駅伝だ。この2つに箱根駅伝を足して、大学三大駅伝と呼ばれている。 全日本大学駅伝のスポンサーは準大手ゼネコンの長谷川コーポレーション、箱根駅伝はおなじみサッポロビール。どちらも売上高で5000億円を超える大企業だ。 一方、ダイトー水産の売上高は約5億円。この並びで見ると、より「出雲駅伝×ダイトー水産」の組み合わせが不思議に思えてくる。