リーダー昇格→月200時間残業で限界へ…最悪、社員を「過労死」させる日本のブラック企業がなくならないワケ【中央大学法学部教授が解説】
2015年のクリスマスに、大手広告代理店の社員が過労によって自殺したニュースは、大きな注目を浴びました。日本の労働者のあいだでも、労働環境の改善が叫ばれています。過労死防止のための法整備は進んでいるものの、過労によって命を落とす人はあとを絶ちません。本記事では、中央大学法学部教授である遠藤研一郎氏の著書『はじめまして、法学 第2版 身近なのに知らなすぎる「これって法的にどうなの?」』(株式会社ウェッジ)より、日本の労働法について解説します。 都道府県「残業時間」調査 1~47位(ランキング)
度々ニュースで話題となる「過労死」
【事例】 Aさんは、インターネットサービスを運営する会社に勤務し、WEB開発業務を担当していました。新しいプロジェクトの開発リーダーを任されることになった12月頃から、労働時間が以前よりも急激に増加し、月100~120時間の残業が続くこととなりました。 翌年の4月からは、徹夜や数時間の仮眠をとるのみで働き続け、時間外労働(残業)は月200時間に達していました。ある日Aさんは、仕事中に、くも膜下出血を発症して倒れ、なんとか一命はとりとめたものの、右半身まひの後遺症が残り、その後も復職できていません。 このような事件は、よく耳にすることです。世界から日本人は働きすぎだと言われ、ニュースなどでもことあるごとに、働き方の見直しを訴える特集が組まれています。大手広告代理店の新入社員が、2015年末に過労による自殺をしたニュースは、記憶に新しいかもしれません。それでも、状況が劇的に改善されたという話は聞きません。 下の図表を見てください。 業務における過重な負荷により脳血管疾患または虚血性心疾患等を発症したとする労災請求件数は、過去10年余りの間、毎年、700~900件ほどあります。その中で、支給決定(認定)件数も、200~300件程度となっています。 さらに、勤務問題が原因の1つと推定される自殺者数は減少傾向にありますが、とくに、「仕事の疲れ」による自殺が毎年、3割程度を占めています。 国のさまざまな政策も虚しく…なくならない「過労死」 国のさまざまな政策にもかかわらず(たとえば、平成26(2014)年に「過労死等防止対策推進法」が施行されましたし、平成27(2015)年には、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が閣議決定されています)、日本の労働環境はあまり改善されていないように感じられます。