棋士人生初の降級後に“ある変化”「指し慣れた将棋は選ばずに…」斎藤慎太郎(31歳)が王位リーグ戦で見せた“大胆さ”の正体
なかなか大きな結果に恵まれていないトップ棋士にとっては、是が非でも勝ちたい一局だろうと勝手に思っていた。 【当時の写真】小学校3年の藤井八冠&伊藤七段&川島さんの豪華ショット&ピアノを“連弾”する幼稚園時代の藤井八冠など秘蔵ショットを見る 5月30日に行われた王位戦挑戦者決定戦は、斎藤慎太郎八段と渡辺明九段の顔合わせとなった。 タイトル1期獲得の実績を持つ31歳の斎藤は2021年、'22年と連続で名人戦に挑戦したが敗退し、以後はなかなか良績を残せなかった。それどころか今年2月に最高峰の順位戦A級から陥落。棋士人生初の降級を経験した。 斎藤はこう述懐する。 「A級順位戦は後半戦になるにつれて自分の将棋がどんどん狭くなっていった。星が伸びずに苦しくなったことで、自分の経験がある形に頼ろうとしすぎたんです。そうなると相手も予想できるので、研究した形になりやすい。精神面の余裕のなさが陥落につながった気がします」 順位戦降級後の最初の対局が、王位リーグ2戦目の豊島将之九段戦だった。斎藤は大胆な作戦に打って出た。居飛車党にもかかわらず、四間飛車を採用したのだ。 「開き直って新しいことにチャレンジしてみました。結果的には負けてしまったけど、将棋の面白さを再認識することができたんです」
棋士生活12年の原点回帰
プロは結果にこだわり抜かなければいけない。だが元々は将棋が好きで好きでたまらない少年だったのだ。棋士生活を12年続けてきた斎藤にとって、原点を確認する作業が必要だったのかもしれない。 豊島戦は惜敗してリーグ戦の成績は1勝1敗となった斎藤だが、「その後の対局では将棋の幅を広げて指したつもりです」と語るように、ノビノビとした気持ちで駒を運んだ。リーグ紅組を4勝1敗で優勝し、挑戦者決定戦に進出。渡辺に勝利すれば約2年ぶりのタイトル戦出場が決まる。待ちに待った大舞台だが、斎藤に特別な昂りはなかったという。 「指し慣れた将棋は選ばないようにして、少し新しいことをやろうと思った」と順位戦降級後に至った心境のままだった。それにしても、タイトル戦出場への意識は全くなかったのだろうか。 「そもそも今期の王位リーグは残留を目標にしていました。過去に1度経験した時は陥落したので。残留が実現したら挑戦が見えてきます。だから目の前の一局を頑張ろうという心境でした」
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